危ういのはドラギ氏ではなくドイツ

あおった期待、超えられず=「ドラギ流」に危うさ−欧州中銀〔深層探訪〕
時事通信 12月5日(土)8時33分配信
 追加金融緩和の決定が確実視されていた3日の欧州中央銀行(ECB)理事会。ふたを開ければ緩和策の内容が最低限の予想にも届かず、市場には動揺が走った。取り得る政策手段が限られる中、ドラギ総裁は自身であおった期待を超える内容を用意できなかった。中銀の動向が市場に与える影響は世界的に強まっており、市場の期待に常に応えようとする「ドラギ流」の危うさが露呈した形だ。

早い段階で追加緩和に動こうとしたドラギ氏はさすがというべきですが、ドイツに邪魔されて残念な結果になりました。

独連銀総裁、追加緩和「必要と思わず」 欧州中銀を批判
2015/12/4 10:05日本経済新聞 電子版
 【ベルリン=赤川省吾】欧州中央銀行(ECB)が3日に追加緩和を決めたことで、理事会内の亀裂が鮮明になった。ドイツ連邦銀行(中銀)のワイトマン総裁が「リスクと副作用がある金融緩和は必要とは思わなかった」と語り、公然とECBに反旗を翻した。

ドイツは徹頭徹尾、国益しか考えないというわけで、本来なら立派なことなんですけれども、ユーロの枠組みでは機能不全の元凶になっていますね。
やはり、エゴを発揮するべきところでは発揮できる状況に我々は留まるべきで、EUとかユーロ圏などというのは絵に描いた餅でしかないのでしょう。
再び、はじめの記事から。

ユーロ圏の消費者物価上昇率は0%近くで推移。デフレへの警戒が、ドラギ総裁を追加緩和に突き動かしている。ただ「物価低迷の主因は、一時的な原油安」(独連銀のワイトマン総裁)など、理事会では追加緩和への慎重論も根強かった。

インフレ率だけ見てしまうと、こういう屁理屈が捏ね放題になるんですよね。インフレ目標の弱点の一つ。
ユーロ圏の場合、高い失業率をともなう低インフレ(実質デフレ)に陥っていますから、いまの日本とは異なります。日本はもうすぐ、好景気時に経験した低失業率に至ろうとしています。
インフレ率だけ見て実体経済を見ない人間が、ドイツ連銀の総裁・・・

また、ECBは損失を出さないため、一定以上のマイナス利回りの資産は購入できない。ECBの大量購入で、既にユーロ圏の国債のうち4割の利回りはマイナス圏に沈む。このため、資産購入額にも限界がある。

この辺もユーロ圏特有の制約ですよね。
日本だったらマイナス利回りのお金は日本政府に行くだけなので何の問題も発生しません。

ドラギ総裁は、12年には欧州債務危機を無制限の国債買い支えで封じ込めた。量的緩和策の表明時も、予想を上回る購入額を示して市場の期待を満たした。ただ、市場は常に「次の一手」を求める。打つ手に限りがある以上、期待に永遠に応えるのは不可能だ。

不可能ではありませんよ。というか、市場の要求が無限に拡大することはありませんし、過剰な要求になっているときには好景気になっているときなのですから、無視することによって多少為替レートが動いても問題にならないです。
金融政策を危険物扱いする典型的な煽り記事でした。