失業率・追加緩和・消費増税

いくら在野リフレ派を嫌悪するようになったからといって、消費増税に反対であることには変わりありません。この辺が私と彼らの違うところ。
消費税に反対する理由は、人間の命は有限なので、消費税で景気の邪魔ばかりされていたら、その間に人生が終わってしまうということと、所得税から消費税へのシフトが金持ち優遇であること、であります。
消費増税で日本が再起不能になるなどとは思っていません。それはリフレ派とクルーグマンによるデマカセだと考えています。
現在の状況を見てもわかるとおり、消費税は日本ではかなり有害な影響を景気に及ぼしますが、金融緩和をしていれば一年も立たないうちに回復を始めるということが分かりました。
消費税をあげたら再起不能になるという言説は、金融政策が景気に効かないといっているのと同じなので、在野リフレ派は自家撞着を起こしています。
金融政策が効く理由として彼らが挙げていたワルラスの法則から考えても、消費税で日本沈没説は整合性がないというべきでしょう。

田副総裁の岡山講演

いろいろ興味深い記事が出ています。

物価に「下振れリスク」=当面は現行政策望ましい―岩田日銀副総裁
時事通信 12月2日(水)17時0分配信
【略】
 岩田副総裁は、「物価の基調が変わりそうなら何らかの対応をする」と追加金融緩和の可能性に改めて言及。ただ「今の時点で総合判断すると、現在の政策を続けていくことが最善だ」とし、当面は現行の量的・質的金融緩和を維持することが望ましいとの認識を示した。
 2017年4月に予定される10%への消費税率引き上げの影響については、「前もってはっきりとは分からず不確実だ。予断を持って言えない」と述べるにとどめた。 

在野リフレ派はやたらと追加緩和せぇと要求しますが、いつものことながら根拠不明確。
私は世間的な定義だと「金融政策一本槍派」という人格的な偏りのある人種だと思われているのですが、私はいま追加緩和が必要かどうか分からないですね。
黒田岩田日銀が慎重なのはむしろよく分かり、10月末に追加緩和が見送られた際に、在野リフレ派が「黒田の野郎」とか「国民を殺す気か」などと非難していたのは意味不明でした。おかしいのはお前らだろ、と。
実際、その数日後、11月6日にはアメリカの雇用統計が好調だったのをうけて、円安株高が発生して今に至っていますからね。あの段階で追加緩和をしなかったのは結果的に正しかったわけです。
軽薄リフレ派が言うとおり追加緩和していたら、大統領選が始まっているアメリカでは日本叩きで支持を得ようとする候補者が出ていたかもしれません。
(いつでも強調しますが、アメリカは2009年以来財政支出を減らしていますし、歳出のGDP比は日本よりも低い、正真正銘の緊縮財政を行っていますが、経済は実に好調に回復しています。リフレ派とケインジアンは整合的な説明をするべきでしょう。)

岩田日銀副総裁:現状維持が「最善」−近い将来リスク顕現化予想せず
2015/12/02 15:44
ブルームバーグ):日本銀行岩田規久男副総裁は2日午後、岡山市内で会見し、近い将来に景気や物価の下振れリスクが大きくなるとは思っていないとした上で、「現在の政策を続けていくことが最善だ」と述べて今後1、2カ月のうちに追加緩和を行うことには否定的な見解を示した。
【略】
消費増税の影響「不確実な要因ある」
2017年4月に予定されている消費税率の再引き上げが景気・物価に与える影響については「不確実な要因がある」としながらも、「実際に増税されて、その影響をみないと、金融政策運営をどうするか前もっては言えない」と述べた。

追加緩和をするべきかどうか分からない、もう一つの理由は失業率です。
現在の失業率は3.1%で、「緊縮財政によるリセッション」のわりにはよく下がっています。謎ですなぁ。
失業率は2015年にはいって、0.5%くらい下がったんですよね。消費増税にも関わらず。
過去の日本のデータをみると、失業率が2.5%くらいになると、経済の調子はかなり良いです。
となると、来年ぐらいには相当経済がよくなる可能性があるわけです。あと30万人くらい失業者が減らせば良いということなんですけど、30万人くらいならイケそうな感じが私はします。
そういう状況ですと、追加緩和をするとオーバーシュートするんじゃないかという懸念があるのは当然であって、「追加緩和しろしろ」と要求する人たちはデータを見ているのか、という疑問が湧きます。
次の消費増税は、もしかしたら今書いたような低失業率・賃金とインフレ率上昇基調の経済下で行われることになるかもしれませんから、そうなれば2014年の増税よりは影響が少なくなるのかもしれません。
影響があったとしても金融政策で立て直すことができることは今年分かりましたし。その意味ではそんなに悲観することもないのだろうと思います。
ただ、消費税は金持ち優遇のクソ税制であることには変わりないので、増税するべきではないとは思います。

増税でデフレ戻りかけたが追加緩和で上昇軌道=岩田日銀副総裁
ロイター 12月2日(水)12時9分配信
【略】
<消費増税でデフレに戻りかけた>
岩田副総裁は、QQE導入後「消費税引き上げ直後の昨年4月までは消費者物価は2%に向けて順調に上昇し続けていた」と指摘。その後、増税による消費縮小とエネルギー価格下落でいったんデフレに戻りかかった物価の基調は、「追加緩和効果が発揮されて2015年に入ってからは2%に向けた上昇軌道に戻っている」と強調した。2%の物価目標に達する時期は16年度後半ごろとの従来見解を繰り返した。

政府にいる人のなかで消費税の悪影響をはっきり言うのは岩田副総裁くらいじゃないでしょうか。実に立派ですね。
また、消費税の悪影響を追加緩和で相殺した旨も述べておられます。これも岩田副総裁しか言っていないことですね。ほかの人は在野リフレ派も含めて一人も言及していません。

日銀版コアコアCPIだけ見て政策運営しない=岩田日銀副総裁
ロイター 12月2日(水)15時13分配信
【略】
短期国債を中心としたマイナス金利については「QQEが効果を発揮して経済がよくなると名目金利も上昇するので、日銀の国債買い入れの力の方が強く、デフレ脱却が道半ばであることを表している」と指摘した。
【略】
また「景気回復局面では労働生産性が向上するので物価よりも賃金が上昇する」とし、「完全雇用に近づいていけば賃金と物価は共に上昇する」と説明。「物価が上昇しても雇用が増えないスタグフレーションにはならないように、政策運営したい」と述べた。
【略】
最低賃金、経済学的には雇用減>
政府の打ち出した最低賃金引き上げへの評価についてコメントを控えたが、最低賃金制度は「伝統的な経済学では雇用を減らすとされてきたが、最近は生産性を上げるとの議論もあり、経済学上議論が二分されている」と指摘した。

短期国債のマイナス金利は興味深い現象です。
日銀の買取圧力について記事では言及されていますが、他の要因として、マイナス金利であっても銀行は、銀行間取引の担保として短期国債を必要とするために購入するらしいです。
ただ、満期が来る前に日銀に買い取ってもらえば損することはないので、遠慮なく買えるようです。
日銀がマイナス金利国債をどんどん買うのも政府にとっては「得」なことかも・・・
最低賃金については高橋洋一氏の発言と同じことを岩田副総裁も述べておられますが、安倍政権が言わせている感が満載ですね。まるで同じなんだもの。
ただ、高橋洋一氏は八田ミクロの内容を知っているかどうか怪しいですが、岩田副総裁はほぼ確実に知っておられるので、その辺の印象は全然ちがいますけどね。

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