最低賃金と給付金

補正予算は3兆円くらいで、給付金が3000億円くらいらしいので、やはり9割が政府支出になるという成り行き、まぁ現実はこんなもんだろうという感じがします。
景気対策」とか「弱者対策」という美名のもとに財政を濫用するのはいつの世も変わらない現実ですし、そういう現実を無視して維持される権力は存在した試しがないので、仕方ないことであります。
9割が政府支出となると、景気浮揚効果はほとんど期待できませんが、給付金が1000万人には配布されるということは、安倍政権は経済学者のいうことを無視しているわけではありません。
むしろ、素直に受け入れている方だろうと思います。
考えてみれば、最低賃金1000円目標も、リフレ派ないしケインジアン、その他の経済学者が「有益です」と勧めていたから採用したのでしょう。
(リフレ派ないしケインジアン、その他の経済学者がミクロ経済学の標準教科書の真逆を勧める理由が説明されるべきでしょう。)
政権としては、「現役層は最低賃金で、引退世代は給付金で」というコンビネーションを考えたようにも見えますので、意図としては良心的な方なんでしょう。
ただ、アドバイスした経済学者がおかしかったというだけで。
ですから、現在リフレ派が「給付金をまく範囲が狭い」とか「額が足りない」といった他人事みたいな批判をしているのは実に鼻持ちならないことでありまして、まさにあんたらがおかしな提案をしたからこうなったんじゃないか、と誰かが言うべきでしょう。
リフレ派の振る舞いは、政策がうまくいっているときには自分たちの手柄のように選民きどりですが、うまくいかない、気に食わないとなると何の責任をも感じる様子もなく批判に転じるので、その立ち回りは大変汚いと言っておきましょう。
官僚や政治家を批判する資格はありません。
最低賃金1000円構想に政権が飛びついたのは、この政策は企業(本質的には労働者ですが、政権は気付かなかった)に負担を押し付けるので、費用や労力がかからないからでしょうし、給付金を低額年金受給者に限ったのも、要する費用が少なく、審査する労力が少なくて済むということでしょう。
これは「経済的」な発想ですから、責めるのはおかしいです。
多額の費用を要する政策は財政再建の邪魔になりますし、多くの労力が必要な政策は機動的な財政政策をやりにくくしますから。
給付金3000億円の政策だけならよかったのですが、最低賃金1000円という愚策が打ち出されてしまったのは、リフレ派ないしケインジアン、その他の経済学者が専門家としての立場から政治家に吹き込んだのが原因ですから、政権の落ち度というよりも、むしろ日本の経済学者が変な思想にとりつかれているというところに問題があるのだろうと思います。
政治家ばかりが批判を浴びて責任を負うのも気の毒な話であります。