財金併用ポリシーミックスは本当に必要か

景気対策に財金併用が常識と捉えられていることは事実なんですけれども、それが有効なのか、必要なのか、という議論には証拠が必要であります。
財政資金は税金ですから、無効なこと、必要のないことに使ってはいけません。
財政を使うなら、それが有効である、必要であることを、証拠をあげて、反対派を説得できるようにしなければいけません。
本来ならば。
しかし日本の現状は、「財政は言うまでもなく景気に有効である」というドグマだけをあげて、いくらでも無責任に財政を使っているところに問題があります。
リフレ派の大半も財政重視派なんですけれども、リフレ政策に賛成しながらも私がおかしいと思うのは、財政が有効であることを証拠をあげて主張しているリフレ派がいないということであります。
単に意見として、「財政は有効である」と言っているだけ。
政治的にみると財政の有効性を否定するのが難しいということはわかります。
安倍政権だって、「財政が景気に有効である」というドグマがある方がやりやすいでしょう。
政治や歴史を知らないわけではないので、その辺は理解しています。
しかし、理論として、社会常識として、有効でないものを有効であると言い張るのは、どこかで社会に有害な影響を与えるでしょう。
リフレ派は景気対策の他に社会的公平性を重視するとして再分配を主張することが多いですが*1、財政政策のうち、政府支出を国債を財源として行うことは、公平を損なうということを絶対に言いませんね。
政府支出は政府と関係のある限られた業者に税金を与えることであり、その関連業界に天下りが行われていて、献金や票を通じて政治家にも利益が還元されている、という問題は散々取り上げられていて、そのような腐敗を引き起こしているのが政府支出の濫用であることは明らかであるのに、リフレ派はそのあたりを曖昧にして、「財政は有効である」と言っています。
「政府支出はあまり効かないが、減税系の財政政策なら有効である」と明確にするべきだと思うのですが、そうは言わず、「財政政策」というあやふやな言い方をしますね。
また、国債を財源とすることは、国債を買える資金を持っている層に利子付きで、それはつまり貧しい人々もふくめた国民全体から徴収した税金で返すということであり、格差を広げることになるのですが、それも絶対に言いません。
この辺は欺瞞です。

ータを観察する

現在の経済状況は、データに基づくなら別に悪くないと私は思うのですが、財政推しの人々は、なんの根拠もなく「経済状況が悪い」「リセッションだ」と言っています。
コアコアCPIが上がり、就業者数も増えるリセッションが存在するというのも驚きですが、それはともかくとして、財政推しの人たちは、現在の経済状況が良くないのは財政が足りないからだ、金融政策だけではダメだからだ、と、これまたしつこく根拠なしに言い張ります。徒党を組んでね。
言い張るのは勝手ですが、それは意見にすぎないので、データを参照しましょう。
小泉政権期は2001〜2006年で、実質GDPは476兆円から512兆円に増えました。名目GDPはデフレのため、505兆円くらいにとどまりました。
日本のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳
この間の歳出を見てみると、183兆円から174兆円に減らしています。
日本の歳入・歳出の推移 - 世界経済のネタ帳
つまり、歳出を10兆円ほど減らしたにも関わらず、実質GDPは36兆円も増えたということが分かります。
このような現象がおきた理由は当然のことながら、量的緩和政策であります。クルーグマンはこの期間の量的緩和は効果がなかったと再三にわたって主張していますが、どこに目がついているのでしょうか。
一方、現在の安倍政権ですが、2013年の時点で歳出は194兆円あり、2015年は198兆円にのぼると見られています。補正を組むと200兆円を超えるでしょう。
実質GDPは2013年が527兆円、2015年は530兆円になるとみられます。
名目GDPは2013年が480兆円、2015年は499兆円になるとみられます。
つまり、小泉政権期とGDPは大差なく、歳出はスタート時点ですでに、小泉期の末期よりも20兆円も多かった、ということが確認できます。
そして、財政支出を増やしているにも関わらず、財政推しの人たちからみると「リセッション」になっているということも確認できます。
どの辺が「緊縮財政」なんでしょうね?
ここから分かるのは、財政推しの人々が一切データを見ていないこと、また、金融緩和下の財政政策も大した効果がない、ということです。

*1:安達誠司氏は例外