誤った常識の弊害(最低賃金)

グローバリズムとは現代の「奴隷制度」である! ~反資本主義の哲学者、スラヴォイ・ジジェクがえぐる先進諸国の欺瞞(川口 マーン 惠美) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
おかしいな、と思うのは、「難民問題の原因はグローバリズム」と始めておきながら、「解決策はアフリカからの西側資本の撤退」とつながるところ。
この2つは関係ありませんね。
アフリカの資源を「搾取」している多国籍企業は、別に民族主義と国境の撤廃なんぞに関心はないはずですので。
アフリカの資源が民族資本によって開発されて輸出されたとしても、民族資本が国民を奴隷扱いしたら、この記事の筆者の立場からは地域主義にのっとって放置するということになるのでしょう。
しかし、その場合でも難民は発生すると思いますので、その場合にも地域主義にのっとって放置するのでしょう。
私なんぞには、グローバリズムを批判しても難民問題の解決にはならないような気がするのですが。

今、ドイツでは、難民の流入をプラスと考えようという論調が盛んだ。足りない労働力を補ってくれる。人口も増える。だからそれを歓迎しようという話だ。しかし、ドイツの産業界は、難民を最低賃金の規定から除外しようと画策している。新しい奴隷制度が形成されつつあるというジジェク氏の理屈は、ここにも当てはまるかもしれない。

最低賃金は良いものだ、という思い込みで書いてしまうとこのようになります。もちろん、そのように思い込んでいる人は多く、安倍政権もその思い込みを強化しようとしていますし、経済学者ですらそういった俗情に乗っかろうとしている始末。
教科書の内容の真逆を学者が平気で言ってしまうのが経済学の現状なので、科学になる日はまだまだ遠いですね。
日本の生活保護改革案にもあるのですが、企業から求められにくい条件を持っている人については最低賃金を撤廃して働けるようにした方が、仕事を得やすくなります。そして、足りない生活費は生活保護で支給されれば良いというわけです。
現在ドイツに流入している移民は、ドイツ語や英語を話せない人が多いでしょうし、なんの知識や技能もない人が多いでしょう。
そのような人たちを企業が活用することは難しく、最低賃金が設定されている状態では雇用されにくいでしょう。特に、ドイツは最近になって統一的な最低賃金を作ってしまいましたし。
移民には基本的に財政による支援があるのですから、最低賃金は必要ありません。どんな賃金でも働いて、足りない生活費はドイツ政府が出せばよく、そうやって働いた方が、ドイツ語・学識・技能・生活常識、などを身に付ける機会に恵まれます。
何もしないで支援だけ受けていたら、何も身に付けることができません。
日本の生活保護と同じ構図です。