誤った常識の弊害(財政)

消費税10%は結局、導入できない〜化けの皮が剥がれた「アベクロ理論」、日銀・財務省の悲願は露と消える(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(2/3)
経済にまつわる話は、話す人の金銭的利害や社会的利害、思想・好みによって歪められることが多いので、間違った常識が定着して現実の政策に害をもたらすことがしばしばありますね。

先日も、官邸サイドと日銀・財務省の亀裂が垣間見える瞬間があった。麻生太郎財務相が、10月23日、閣議後の記者会見で「物価上昇を金融でやれる範囲は限られている。世の中にはおカネではなく、需要がない」と述べたのだ。

麻生だからトンデモ、と言いたいところですが、同じことを言う人は大勢いますし、専門家や学者の中にもいます。
もちろん、根拠なく言っているのですが・・・
「財政政策と金融政策は、同じような種類のものであり、効果も同じようなものであり、要するに従兄弟みたいなもの」と捉えている人は多く、その考えにはまったまま、データや事象を何も参照しないので、いつまで経っても考え方が修正されないという。
麻生としては、財政、なかんずく政府支出を使いたい人々、これは官僚・政治家・関連業界の人々ですが、そのような人々の利益を代表しているので、このような発言になるのでしょう。
そこに、思想や体面、社会的利得などの都合でのっかる専門家や学者がいるのだろうと思います。
物価上昇は金融政策でやる以外にないのは議論の余地はありません。
なんども言われているのですが、金融政策で経済活動を活発化させないと、いくら財政を使っても、ほかの面で支出が減るだけなので意味がありません。これはこの20年の日本の経験でも明らか。
また、金融政策をやっていれば財政をやると効果があがる、という見解について、これは正しいだろうとは思うのですが、現実に観察されていないのが痛いところ。
2015年4〜6月期のGDPが前期比で下がったことについて、「財政が足りない」と、これまた根拠なく言う人が多かったのですが、実際には2014年の補正予算は3月に決まって6月末までに9割が契約済みになったわけですので、期間としてピッタリ重なります。
ここから洞察されることは2つあって、一つは金融緩和下で3兆円もの補正を組んでもなんの効果も見られなかった、という見方。或いは、効くのかもしれないが、いつ効くのかわからず、「財政政策には即効性がある」という従来の見方が間違っているということ。
いずれにしてもネガティブな結果しか観察できません。

金融緩和で円安になれば輸出が増えて、大企業が儲かる。徐々に国民全体の賃金も増えて、消費が刺激されるというのがアベクロ経済の基本理論だった。

ツイッターでも言っている人がいますが、金融緩和の目的が為替レートであるとか、輸出であるとか。
金融緩和の効果としてはそのようなことが言えますが、目的としてやっているわけではなく、そのような説明は日銀からもあったはずなんですが、読んでいないのでしょうか。
典型的な藁人形論法であって、相手の言い分を捏造して叩いているだけです。
金融緩和の目的が為替レートなら、アメリカが金融緩和したら相殺されて、日本からの輸出は増えず、景気も良くならないはずですが、現実世界では輸出は増えましたし、日本の景気も良くなりました。
この現実をどう説明するのでしょう。
また、為替レートが目的ならば、日本が金融緩和しなくても、アメリカが金融引き締めすれば円安になるでしょうし、それで済んでしまうことになるのですから、これもおかしな話です。
為替レートが相対的なものであることを知らない人が、上記のような妄説を流すのだろうと思います。