実体経済の改善が資産市場に反映

フレーション政策について、「資産市場の改善⇒実体経済の改善」というルートで理解していたので、5月下旬からの資産市場の停滞に不安をおぼえていたのですが、アメリカや日本の実体経済の改善を反映して、為替や株価が戻って来ました。
為替は99円、株価は13600円くらいです。
週末にアメリカの株価が下がったので、月曜日の日経平均はまたも大きく下げるのかもしれませんが、為替レートが円安気味になってきたことは良いことです。
予想インフレ率がどうなっているのかも気になります。実体経済の改善が予想インフレ率にも良い影響があるなら、その上下動にもそれほど神経質になる必要がないということが確かめられます。
この動きは岩田副総裁が事前に指摘しておられた通りで、私にとっては新たな学びとなりました。
岩田日銀副総裁インタビューの一問一答

──世界経済の動向をどのようにみているか。
「一時より安定している。わが国の実体経済は改善している。今後は実体経済を反映して株・為替・金利は動いていくと思う」

リフレーションの動向は、「金融政策⇒資産市場の改善⇒実体経済の改善⇒資産市場の改善…」といった相互作用なのだと理解しました。
資産市場に変調が出たからといって、あたふたと金融政策を変更するものではない、ということですね。
その変調が大きなものであれば変更も必要かもしれませんが…
ただ、インフレ目標の達成に対して揺るぎなく進んでいく、というメッセージを繰り返し発する必要はあるようで、それは日本リフレ派もサムナー教授も共通して言っていることであります。
「予想」に傷が付くのは本当に恐ろしいことで、実際のカネをたくさん出しても政策効果が出てこなくなる危険性があります。
この点に関して思うのは、

  • やっぱり「水準目標」の方が「予想」を安定させるのでは
  • 名目金利に拘泥するメッセージはもうやめたほうがいいのでは

ということです。
水準目標についても岩田副総裁の著作で言及されてはいますが、場合によってはより強力な金融政策になるので、世間の理解が得られにくいだろうと思います。
現在行なっている「率目標」で、ある程度の成果や「生活の何事も無さ」を立証してから水準目標に移行するのがいいのかな、と考えます。
また、上記リンクをよく読むとわかりますが、名目金利に言及していないのは、さすがは岩田副総裁です。これまでの著作内容とまったく変わらず、「本質的に重要なのは実質金利である」と述べておられます。
名目金利にこだわるのが、これまでのある種の「常識」であったでしょうし、ある学派の理論でもあるのかもしれませんが、いい効果を生まないことがアメリカでも日本でも観察されています。
名目金利を気にして金融政策を運営するのは止めるほうが、マーケットからの反応も良くなるのではないかと思います。