デフレ脱却のために何を買うか

本の金融緩和志向が安倍首相によって発表されて、まだ本格始動していないにも関わらず外からの牽制を受けていますが、変動相場制の日本が自由な金融政策を行なって何ら恥じるところはないというのは単なる仕組み上の事実であって、金融緩和をさんざんしてきたイギリスや韓国から文句を言われる筋合いはないわけであります。
とはいえジョージ・ソロスが言っているように、「どこまで円安が許されるかはアメリカ次第」なのが現実でしょう。
アメリカの輸出業界からの文句を米国政府が「まぁまぁ」と抑えている状態だと思うので、いくら「デフレ脱却のためにどこまで円安になる金融緩和をするべきか見当がつかない」としても、ほどほどのところで止めなければ顰蹙を買うかもしれません。
経済学的には金融緩和には金融緩和で応えて別に問題ないのですし、日本としても許容されるインフレ率には自ずと限界があるので無限の金融緩和はなされないのですから、「通貨戦争」などという考え方は虚妄なのですが、「2%のマイルドインフレを目指したら為替レートが130円になってしまいました」というのは経済学に詳しくない米国の輸出業界のお偉いさん方には通用せず、またぞろ理不尽な圧力を加えられてしまうかもしれません。
OECDによれば条件対等な為替レートは103円ということですし、浜田宏一教授も「100円なら問題ない。110円だと少し問題。」と仰っておられ、これは日本にとって問題というより対外的なことを指しているのかもしれません。
条件対等なレートであれば、外国から批判されても平然と言い返すことができますが、日本の輸出業界にとって相当に有利なレートでは、恥を知る武士である私たちとしてはちょっと口ごもってしまうかもしれません。
恥を知るのは日本人の弱みという見方もできますが(^_^;)
浜田教授が100円なら問題ない、というからにはその辺まで金融緩和すればデフレの脱却もいずれはできる、ということかもしれません。
それなら問題ない。
しかし問題になるのは、100円に達したときに「デフレ脱却にはまだ緩和が足りない」「できるかもしれないが時間が掛かり過ぎる」という場合です。
デフレからの脱却が困難であり続ける限りは金融緩和を拡大しなくてはなりませんが、為替レートが下がりすぎると友好国からも圧力がかかるようになるということでは政治的に苦しくなります。
日本はどうしてもデフレから抜けださなくてはならないのですから、その場合でも緩和を続けなくてはなりませんが、友好国にもメリットをもたらす工夫をするべきだろうと思います。
金融緩和の際に最も一般的な資産は満期までが長い国債ですが、外国への配慮を兼ねるなら、外債を買うべきだろうと思います。
その場合でも無難なのは外国債なのかな、と思います。
アベノミクスへの対応を見ている限り、買うべきなのはアメリカ国債になろうと思います。
米国債であれば日本国債を買う場合と違って、「財政ファイナンスだ」という非難を浴びることもなくなります。
(ただし、日本国債の買いオペをすることは財政ファイナンスなどではありませんから、日銀やマスコミの言い分は間違っているのですが。)
欧州の危機対応に役立つ債券を買うのも本来なら結構なのでしょうけれども、ヨーロッパは全体的にどうも日本を叩きたがっているようなので、敢えて協力する必要がないかな、と思います。
ただ、経済合理性から言えばアメリカ国債を買うのが良いとはいえ、国内の政治的な人々からの反発が一番多い案でもあるでしょう。
マスコミにとっても安倍政権を攻撃する格好のネタになってしまうでしょう。
「アメポチ、アメポチ」の大合唱が起こるはずです。
そう考えると政治的にはハードルが高いアイデアであって、現実世界は合理的な判断や行動をするには困難が多い場所であるな、という思いを新たにします。