「エコノミスト」を読むとバカになる

エコノミスト」に限らず、一つの新聞をずっと読み続けるのは有害です。
新聞は他から言われて書きました、という曲がった内容の記事を載せるのが普通ですし、その情報操作機能が便利に思われているのですから、出来る限り情報源を多様化させなければ、容易に洗脳されてしまいます。
その意味では日本における新聞の宅配制度は非常に悪い仕組みだと言えます。
エコノミスト」は特に、「これを読むと経済に詳しくなる、ビジネスに役立つ」といった日経と同じ過剰評価を受けている媒体なので、その有害度が目立って大きい存在だと思います。
エコノミスト」は他の新聞や雑誌と同じように間違った内容やウソを掲載することが普通にあるメディアなので、どのメディアに対するのとも同じ様に眉唾で読むのが正しい態度だと言えます。

前回の「通貨戦争」はいつ発生した?

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36986
エコノミストがこんな記事を挙げていましたが、読んでみてずっこけるのは、タイトルに「再燃」とあるのに、前回の「通貨戦争」がいつ発生したのか書いていないという点です。
かろうじて推測できるのは、スイスが金融緩和を伴う無制限為替介入をしたことを「戦争」だと捉えているのかもしれませんが、日本は単に金融緩和すると言っているだけなので為替だけを目的にしているわけではありません。
もちろん同じ事をしてもよいのですが、金融緩和をすれば当然に円安になるので、あからさまにやる必要はないですし、何より「為替には介入しなければならない」という古い思い込みを日本では払拭する必要があるので、やらない方が良いと思います。
日本ではいまだに固定相場制のころの「常識」で発言する人たちが多いですから、アンラーニングしていただくのが大切です。

外国為替市場も今、同様の問題に直面している。何しろ今、ほぼすべての国が、自国の輸出業者が価格優位性を持ち、市場シェアを獲得できるよう、自国通貨を弱くしたがっている。

金融緩和は輸出のためだけにやるものではありません。
エコノミストはそのような印象付けがしたいということなのでしょう。
日本が金融緩和するのはデフレ脱却が主目的であって、円安による輸出の振興は景気回復の一つの経路にすぎませんし、その効果は他の経路に比べて小さいという見解もあります。
The exchange rate fallacy: Currency war or a race to save the global economy? | The Market Monetarist
この記事では国内需要の高まりの方がメインであると言われています。

だが、ある通貨が下落すると、その他の通貨が上昇しなければならない。通貨高に見舞われた国々は、再び自国通貨を下落させる対応を取り、最後には世界が振り出しに戻るのだ。

振り出しではないです。
金融緩和する国にはリフレ効果が現れるので、その国の国内景気が良くなります。
貿易収支は「差し引き」ですが、景気が悪い状態の差し引きと景気が良い状態の「差し引き」が同じになることもありますね。
(100-90)も(200-190)も答えは同じですが、後者は輸出も輸入も売上が上がっています。
国としてみた収支は同じでも、私たちは国に勤めているわけではありません。

ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長、ジャン・クロード・ユンケル氏は先日、単一通貨の為替レートは「危険なほど高い」と言った。

域内の貿易がメインなんだから別に構わないでしょう。

ノルウェー中央銀行は、自国が住宅ブームの真っただ中にあるにもかかわらず、通貨クローネの強さのせいで中銀が利上げに慎重になっていることをほのめかした。

住宅ブームが必ず悪というわけではありません。
バブルだと分かるのは崩壊してからですし。
それにバブル潰しは日本を見れば分かる通りむしろ有害なので、バブルが崩壊したあとのショックを緩和する他の手段を考えるのが良いと思います。

日本は海外からのエネルギー供給に大きく依存しており、1月15日には経済再生担当相の甘利明氏が、過度の円安は輸入価格を上昇させると警鐘を鳴らした。もしかしたら甘利氏はここへ来てようやく、日本がより高いインフレ率を望むなら、一部の物価が上昇しなければならないということに気付き始めたのかもしれない。

第一次安倍政権のころにドルは130円まで行きましたが、その当時に誰がそんな心配をしていましたか。
あの頃は良くて、今なら何故悪いのでしょうね。
それにエコノミストか翻訳家がまた間違えていますが、「一部の物価」という言い方は間違いです。
それをいうなら「一部の価格」です。
物価とは私たちの生計費のことを指します。
エネルギー供給については、わざわざ高い天然ガスを買うのをやめて、5分の1だか8分の1だかのガスを買うようにしてください。
エネルギー価格の高さを為替のせいだけにするのはウソですね。
エネルギーは日本の金融政策とは関係ないところで大幅に変動します。
日本が円高に陥ったこの数年間にも大きく変わっている事実を無視するのは何故でしょう。

2013年に入って以降、最も強い通貨の1つはユーロだ。ユーロは単一通貨崩壊の可能性が薄れたという感覚によって支えられてきた。こうした心理の変化の副作用には有益なものもある。例えば、スペインやイタリアの国債利回り低下などだ。

そうそう。
他国の金融緩和のおかげでユーロ危機が緩和されているのです。
これは本来ならドイツが負担するべきことです。
にもかかわらず、ドイツはむしろ日本に文句を言っているわけで、何をか言わんや、です。
ドイツはおそらく、自分たちの経済失政を日本のせいにしようとしています。

現在の状況が極めて異例なのは、先進国の間で量的緩和QE)が非常に広範囲に広がっていることだ。QEは、通貨を下落させるために特別に設計されたものではなかったかもしれないが、政策立案者は為替レートの下落を有益な副作用と見なしてきた。
 ロシアのような発展途上国は、こうしたプロセス全体について皮肉な見方をしているかもしれない。だが、経済の歴史が示唆しているのは、こうした国が先進国に追いつくにつれ、新興国の通貨は上昇し、より豊かな国の通貨が下落するはずだということだ。
 新興国はこうした自然な流れに抵抗してきたため、不自然な形でそれが起こらざるを得なくなっているのだ。

最後はおかしいでしょ。
それは関係ないと思いますね。
アメリカでQEが行われているのはリーマン・ショック後の経済危機を克服するためであって、新興国はそれに対して勝手に文句を言っているだけです。
新興国の動向を考えに入れて先進国が通貨安にしようとしているわけではありません。
あくまでも自国経済のためです。