政府と日銀の共同声明に市場がネガティブな反応をしたのは何故か

市場は日銀を信用していないからです。
1月22日の共同声明を読んで市場は、金融政策の主導権をまだ日銀が持っていることに失望して円高・株安という反応を示したのです。
安倍政権が日銀による誤った政策を止めさせる体制には今だになれていないということがわかってしまったのです。
安倍首相によるリフレ宣言以降、市場は「これまでとは変わるかもしれない」という期待を抱いて円安・株高を現出させてきました。
今回の共同声明によって「その期待は時期尚早である」ということがバレてしまいました。
このことによる悪影響は、例えば菅官房長官などが考えているよりもドラスティックに、深刻に、継続的に現れるだろうと思います。

官房長官はリフレ政策を理解しているか?

官房長官は22日の共同声明発表に際していち早く、「日銀法改正の必要が薄れた」と発言しました。

2%目標の早期実現を評価、日銀法改正の必要性薄れる=官房長官
2013年 01月 22日 16:51
[東京 22日 ロイター] 菅義偉官房長官は22日午後の会見で、きょうの日銀金融政策決定会合の内容とともに政府と日銀で共同声明を発表したことについて、「2%」の数字と「できるだけ早く実現」との表現が含まれたことを高く評価するとした。さらに、日銀法改正について、共同声明を見る限り、その必然性はなくなってきているとの見方を示した。

共同声明による市場の反応をよく吟味しないうちのこの発言は、菅官房長官がデフレ派との対決から生じるストレスに耐えかねていることを表しているのかもしれません。
好意的に見れば、ですが。
「これで上手くいってくれるならそれに越したことはないので、早く穏便に丸く収めたい」という内心があるように思います。
昨年の11月以降、安倍首相の意向が発表されるだけで何兆円分もの円安・株高が実現してきましたから、もしかしたら菅官房長官は「うまいこと言えば何とかなる、それがリフレではないか」という勘違いをしているのかもしれません。
そうだとしたら、ご自分たちがやろうとしている政策の内容への理解がまだ深まっていないということになります。
市場は決して口車にのせられる愚民の集まりではありません。
選挙の際の一般有権者と同じだと考えてはいけません。
政治家が普段相手にしている一般国民とはまったく違う集団だと考えなくてはならないのです。
市場は政治家より経済・経済政策・経済理論に詳しい人々の集まりです。
そのような人々は、政治家が保身できる口先だけの政策を適当に口にしたらすぐに理解してしまいます。
市場は実際に大金をかけて勝負している人々なのですから、タダで気軽に何も考えずに投票してもその個人にとってはどうってことない選挙民とは比べ物にならないシビアな感覚を持っていることを知るべきです。
リフレ政策は、そのような人々を上手く動機づけて動かすために明確な方針の宣言、責任の表明、裏付けとなる金融政策を伴わなければならないものです。
「口先でなんとかごまかせる」とばかりに証拠になる金融政策をやらないという態度は絶対に通用しません。
官房長官が本当に安倍首相をサポートする意思があるのなら、デフレ派とは全く相容れない強い決意をもって仕事をしなければ務まらないということを理解する必要があります。