金融政策の大転換!…浜田宏一教授

不況の真因

今日本が直面している問題は、経済が潜在生産能力のはるか下のところで運行していることです。金融を引き締めし過ぎていて、日本経済は実力を発揮し切っていないのです。つまり、失業、過剰設備の存在のために需給ギャップがあって、潜在生産能力の一部が失われているのです。

日銀は「潜在生産能力の成長率が落ちていることがデフレの原因」などと言ってきましたが、間違いですし、筋道がわからない言い分でした。

日本のマネタリーベースが多いというのは本当か。

日本銀行は「既に金融緩和をしてきている」という説明をしてきましたが、言い逃れに過ぎません。

日本はモノやサービスを買うときに現金で支払うのが一般的ですが、米国はクレジットカードや小切手で支払うことが一般的。つまり、日本は市中に出回る現金の量が、もともと米国よりも圧倒的に多いのです。

インフレ目標が何故必要なのか?

日銀が正しい経済学に従うのなら、それに任せてもいいのです。しかし、この20年間を振り返ると、日本銀行は正しい経済観に従って金融緩和をして来なかった。だから、目標の義務付けが必要なのです。
 デフレ期待がこれだけ定着してしまった現在、個人的には、世界の有力経済学者の言うように、インフレ目標はそれより高く3%でもいいのではないかと思います。

クルーグマン氏は4%のインフレ目標を主張しています。
「金融緩和してもカネは出回らない」という批判に対しては…

ゼロ金利下で金融機関に行って「ゼロ金利でお金を貸してくれ」と言っても、その人に返済のアテがなければ貸してくれるわけがない。「それなら高額の担保を差し出せ」と言われるでしょう。ところが、今の日本のように株式も土地も下がっている状況では、担保物件の価値は低くなります。
 そこで、お金を借りることは難しい。金融緩和で担保となる不動産価格が上がると、お金が借り易くなり、多少のリスクを伴っても新しい投資を行ない、利益を増やそうと考える人が増える。これは米FRB議長バーナンキの主張です。

カネが出回らない仕組みを日銀が構築

日銀は日銀当座預金に利子をつけています。
こんなことをしていたら、銀行は日銀にカネを預けたままにして、世の中に出さなくなってしまいます。

現在日銀は預け金に0.1%程度のわずかな金利を付けています。それは主に、銀行間の短期資金の仲介を行なう短資市場の保護を目的にしていますが、預け金の金利がゼロに近い市中金利と比べていくらか有利なため、市中銀行の資金が日銀に戻ってきてしまうという、金融緩和に日銀自身がブレーキをかける現象を生んだ。その結果企業への貸し出しにお金が回らず、これは悪いやり方だと思います。

日銀は従来、「金融緩和しても世の中にカネが出回らない」という主張をしてきましたが、何のことはない、出回らないような仕組みに自分たちがしてきていたのです。
マッチポンプです。

金融緩和のためには、外債の購入も効果的

政治的なコンセンサスは必要だと思いますが、経済学者は法律家と違い、法や政治的意味での行為の正当化に興味はありません。外債などを買えば円は安くなるため、金融政策にとって非常に有効です。実体を伴わない法律論でとるべき政策をとらないのは、筋違いではないでしょうか。

日本の金融政策に対してウソ混じりの攻撃をしかけてくる外国に対抗するため、韓国債を大量購入したり、ユーロを上げてやる手法をとってみたらいいかと思います。
しかしドイツをピンポイント攻撃できそうにないので、いい手がないかと思いを巡らせたりします。

麻生副総理も言っておられたように、今まで日本だけが我慢して他国にいいことを続けてきたのに、今自国のために金融緩和しようとするときに、他国に文句をつけられる筋合いはないのです。日本の金融政策は日本のためであり、ブラジルや他国のためではないのです。

堂々たるご意見です。
何かあるとすぐに左顧右眄する日本人の国民性は適度に治すのがよかろうと思います。
普段ヘーコラしすぎるから、我慢しきれなくなると暴発して極右化するのです。
理不尽な言いがかりをつけてくる外国人がいたら普通にどんどん言い返す習慣をつけたいものです。

金利暴騰論」の間違い

ノーベル経済学者のマンデルは、、期待インフレ率が上がるほどには国債金利が上がらないことを証明しています。
 実質金利名目金利から期待インフレ率を引いたものですから、金融緩和によって名目金利が一定に抑えられている環境では、期待インフレ率が上がると実質金利は下がります。よって、その影響が名目金利に多少ハネ返って来たとしても、結果的に実質金利が下がって、投資し易い環境になることは変わらず、景気が刺激されることになります。
 重視すべきは、名目金利ではなく実質金利なのです。たとえば、我々が住宅ローンを組んで家を購入するときも、返済時にいくら返せばいいかの指標になるのは実質金利なのですから。

賃金がすぐには上がらないから雇用が増える

物価が上がっても国民の賃金はすぐには上がりません。インフレ率と失業の相関関係を示すフィリップス曲線(インフレ率が上昇すると失業率が下がることを示す)を見てもわかる通り、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率が上がると、実質賃金は一時的に下がり、そのため雇用が増えるのです。こうした経路を経て、緩やかな物価上昇の中で実質所得の増加へとつながっていくのです。

同じ日本人同士助け合いの精神を持ちましょう。
「給料、給料」と連呼するマスコミに騙されてはいけません。
彼らは国民を分断する確信犯です。
仕事がある我々が更に儲かることを政策によって目指すのではなく、政策によって仕事のない人が職を見つけることによって、世の中が全体として豊かになる道をめざすのがリフレです。
我々自身が儲かるためには、リフレによって経済が安定した状況で顧客を増やす努力をするのが正道です。
政策に求めるべきではありません。

日銀法を改正する必要性

白川(方明日銀総裁)緩和がうまく行かないのは、「もうそんなことをやりたくない」という意思を言外に示し、自ら「金融緩和策には効果がない」と吹聴しているためです。本気さが見えない中央銀行の政策を、誰が信用するでしょうか。
【略】
 現状では、アコード(政策協定)をいくら書いても、日銀が「イヤだ」と言うことを強制できる法的根拠が、残念ながらないように思います。やはり日銀法改正は必要です。

実にわかりやすいご説明でした。
今後もお体にお気をつけになりつつも、継続的な情報発信をしていただけるようお願いいたします。
浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」 | 論争!日本のアジェンダ | ダイヤモンド・オンライン