デフレに危機感を持つ一般人を増やす

「実感」は当てにならない

デフレが非常にマズい現象であることがイマイチ認識されない理由として、「人間は実感が湧かないことには納得しがたい」という点があると思います。
実感というのは字面とは裏腹にかなり当てにならないものです。
例えば「小泉期の景気回復は給料上昇の実感がなかったから偽物だ」という主張がありますが、数字を見てみると雇用が増えていたりします。
その時期に雇用された人はゼロの状態から給料が貰えるようになったのですから景気回復の実感が当然あったでしょうが、世の中全体でみると失業者は少数派なので、「小泉期は偽物」という言説の方が世間的には有力な見解になってしまいます。
それは世の多数派の「実感」でしかなく、数字で見れば誤っているのですけれども、マスコミを使った宣伝によってまかり通ってしまいます。

マスコミの問題も重大

マスコミが世の中にフィルターを掛けてしまっているのが非常な障害となっていて、デフレについての正しい知識が幾らかの人々に共有され、発信されていても、妨害電波の如きマスコミからの嘘情報によって相対化されてしまうわけで、これはデフレを理解するのが難しいということ以上に問題だと思うのですが、それでも少しでも多くの人に正しい内容を伝える活動が必要なのでしょう。

デフレに対処できるのは金融政策

デフレを抜け出すには金融政策を中心に据える必要があり、それはアメリカやスウェーデンのように実際に金融政策によってデフレを回避・脱却した実例から知っていただきたいところですが、その金融政策の長としての日銀総裁を誰にするかは極めて重要な部分です。
次の総裁がもし、デフレ脱却について口先で言うだけの人物がついてしまった場合、自民党の「リフレ政策」はうまくいきませんから、それ故にその政策は破棄され、脱出法の分からぬままデフレの沼を今後もさまよい続けることになります。
誤った金融政策ゆえにデフレを克服できないことと、金融政策が無効であることが混同されてしまうと、手がなくなってしまいます。
日銀や官僚、それらに同調する政治家はそれを狙っているわけですが、そのようなことになった場合、大げさでなく日本の将来は危うくなります。

国家債務と社会保障の破綻は国民の生活と命を脅かす

財政政策や産業政策中心ではデフレを脱却できず、債務は膨らみます。
消費増税のために名目成長3%を実現しても、実現して早々に増税してしまえば成長率は落ちてしまい、元の「無成長」状態に戻ってしまいます。
名目成長率を上昇させなければ、債務問題はどんどんと深刻になっていきます。
税収は名目GDP×税率だからです。
そして、高齢社会が進行していくと国債を国内で消化するための貯蓄が足りなくなります。
高齢者は貯蓄を取り崩して余生を送る人が多いからですし、デフレ不況がこんなに長く続いてしまうと、貯蓄が少ないままで高齢者になる人も多くなります。
少ない貯蓄を使い果たした人は年金だけでは生活できませんから生活保護を受けることになります。
財政への負担は増加します。
多額の財政支出が求められる状況で、国債の国内消化ができない状況がやってくると、外国のお金に頼らざるを得なくなります。
外国資金の比率が高まると、現在の欧州で見られるとおり、財政の維持可能性が疑われるとすぐにお金が逃げてしまうようになります。
その場合、外国のカネを引きつけておくために金利をあげなくてならないため、国民の負担は増加します。
また、財政の健全性をアピールするために緊縮財政が行われることになるでしょう。
その状況でも金融政策を果敢に行えば緊縮財政の悪影響を相殺できるのかもしれませんが、金融政策が効いてしまうと、それまで日銀や官僚、それらに同調する政治家が進めてきた政策が間違っていたことが明らかになってしまうため、おそらくは危機的な状況でも金融政策を活用することはないでしょう。
彼らは間違いを認めるくらいなら国が破綻した方が良いと考えているフシがあり、我々一般国民には信じがたいことですけれども、何よりも自分たちのプライドと利害を優先させるという強いエゴを持っているようなのです。
緊縮財政が行われると、公共物や公共サービスの質が低下し、酷い場合には欧州で実際に発生しているとおり、国民の生活や命を維持するための公共サービスすら受けられなくなる例がでるかもしれません。
緊縮財政は景気も悪化させるため、失業はより増加し、財政は更に悪化します。
このようなスパイラルに陥った時に、日本にはお金をくれるドイツやフランスのような存在はいませんし、IMFに頼るようになっても緊縮財政を強要されて国民の生活、そして大げさでなく命が圧迫されることについては同じです。
欧州ではユーロという欠陥ある仕組みが問題解決への道を塞いでいますが、日本の場合、制度上は問題解決が可能であるのに自発的に自縄自縛を選択する、国家の仕組みや財産を個人的な利得のために使うことしか考えない官吏の存在によって塞がれることによって、重大な危機が予見されているのです。
その危機は遠い将来のことではなく、10年〜20年程度の近未来にやってくるわけで、いま対処をはじめなければ、刻一刻と危険は深まっていくことになります。