浜田宏一先生と安倍総裁

日本銀行の白川総裁も頭が上がらない、浜田宏一先生と安倍総裁の対談です。
浜田宏一(イェール大学教授)×安倍晋三(自民党総裁)「官邸で感じた日銀、財務省への疑問。経済成長なしに財政再建などありえない」() | 現代ビジネス | 講談社(1/6)
浜田先生のご研究の成果を私もエントリで使わさせていただいたことがあります。
説明したがらない者は胡散臭い。 - Maddercloud
このエントリは、悪質な学者、日銀や官僚に媚びまくる曲学阿世の徒のデマを否定するために挙げたものですが、私のような一般人がキチンと根拠をもって文章を書けるのも、浜田先生のような誠実かつ偉大な学者の業績によっているわけです。
世の中を良くするために重要な知見を提供してくださる方だと思います。

安倍: 政府と日銀で、認識と目標が共有されていない。
浜田: それが日銀法の問題点だと思うのです。日銀法ができたのは、大蔵省不祥事とかいろんな政治的きっかけがある。中央銀行の独立性がある国のほうが上手くマクロ政策をやっていたような例もありました。
 独立性自体はいいんでしょうが、困ったことに、日銀法では手段の独立性だけではなくて、目的の独立性まで日本銀行に与えてしまった。ですから、国民に対して政治責任を負っている政府が考えるべき、国民生活の雇用とか国民所得などに対して、どの辺まで政策が努力したらいいのかを日本銀行が決めるかのようになってしまったのです。
 確かに細かい手段について、日本銀行の人が一番統計や実務を知っていて、経験も豊かなことは事実かもしれません。しかし非常に緊縮的な失業が多いような状態を日銀が目標とするようになってしまったのは、明らかにおかしい。日本銀行が手段だけでなく、目標まで自分で決めているというところが現行法の問題だと思います。

浜田: 僕は世界に通ずる普通の、標準的な経済学を信じています。そこでは貨幣も重要だし、モノ(実体)も重要だし、その両方を含んだ体系が必要です。しかし、不況や株価下落の原因は実体が悪いからだと、一方しか見ない人たちが多い。
 最近は少し孤軍でもなくなりましたが、どちらかと言えば、少数派で、貨幣面も重要だと頑張ってきました。今回、先生のように経験も、それから将来の日本全体を担うのを国民から託されている方に共感していただくと、非常に心強く思います。
安倍: 景気はまだまだ厳しいでしょう。これから財政出動しますが、デフレ下で増税をするので、景気を冷やしていく危険性もある。よりデフレが進んでいく危険性もあるでしょう。これは明らかに間違っています。
世論調査で5割が増税を支持するというのはね、不思議なことですよ。これではもう、この機会は絶対に逃したくないと財務省は思ってしまう。
浜田: 財務省の人には悪いけれども、地震があったからみんな支持してくれると、天災を増税の口実にしているかたちです。
安倍: これを機に財務省増税を進めようとする。しかも日経新聞や、かなりの経済学者もそれを支持している。われわれは相当頑張らないと飲み込まれてしまって、結局財政赤字はさらに悪化していく危険性すらある。税収はそんなに伸びないどころか、ダウンするかもしれません。
浜田: そうですね。橋本龍太郎先生が総理だった時もまったく同じです。
安倍: あのときも増税で、景気が底割れしました。
浜田: 結局、景気が悪くなり、税収も減収した。法人税、個人所得税まで減収していくという状態でした。

橋下政権の失敗を安倍総裁は率直に認めていらっしゃいます。大変誠実なご発言です。

安倍: 財政規律ばかりが強調されているんですが、これはわれわれにも責任があります。
 消費税を橋本政権下で上げたときに、財政危機を非常に強く国民に訴えたわけです。このままでは大変なことになりますよという、不安を喚起した。ある意味、これが効き過ぎてしまった。最近はギリシャ危機があったので、ギリシャと日本を同一視する人がいる。でもそれは間違った考え方です。
浜田: そうですね。
安倍: かなりの人がそれを平気で言うようになってしまった。財務省も違いを分かっていながら、間違いを指摘しない。たとえば与謝野馨さんはよく「成長ですべては解決しない」という言い方をするんですが、すべてを解決するなんては誰も言っていない。ただ成長せずに財政再建できるかというとそれは無理です。
浜田: とんでもない話ですよ。
安倍: 絶対に有り得ない。

現在の日本の低迷について、与謝野馨氏の責任は極めて重いものです。
そのあたりについても安倍総裁は明確にされています。