池田信夫氏の安倍総裁批判

ちゃんとした「批判」という感じはしませんけど。

安倍晋三氏の無責任な経済政策
池田信夫 2012年11月16日 12:21
http://blogos.com/article/50396/
【前略】
中でも重要なのは、金融政策だ。安倍氏は「インフレ目標の達成のためには無制限に緩和をしてもらう」というが、こういう無責任な政策を公言するのは危険だ。日銀が無制限にマネタリーベースを増やせば、ハイパーインフレが起こることは自明である。それは通貨の信認が毀損されるからだ。

全然自明じゃないですよ。
3%のインフレ目標を達成するまで無制限緩和したとして、どうしてハイパーインフレになるのですかね。筋道を説明して欲しいのですが、これまでの池田氏の論法から考えて説明はしないでしょう。説明できないから「自明」と言っているだけです。
クルーグマン氏などは「4%のインフレ目標にせよ」と言っていますが、この辺への批判を池田氏がしているのを見たことがありませんね。
リフレ派否定の道具としてクルーグマン氏の「発言」を利用したことは何度もありましたが。
又、現在のアメリカも「失業率が改善するまで無期限に緩和する」と宣言して実行していますがハイパーインフレの兆候などありません。
インフレ目標は既に、アメリカ・カナダ・オーストラリア・韓国・ニュージーランドスウェーデン・スイスなど20カ国以上で採用されていますが、ハイパーインフレなど発生しておりません。
こういう基本的な事実の確認すらしない「経済学者」って何なのでしょう。

安倍氏は「マネーを増やしていけばどこかでマイルドなインフレになる」と信じているのかもしれないが、残念ながらそういうことは起こらない。次の図(省略)は各国の中央銀行のバランスシートのGDP比だが、日銀はECBと並んで世界最大である。安倍氏の賞賛するFRBの2倍近い。
なぜそういうことが起こらないかも理論的に説明できる。金利がゼロに貼りついた流動性の罠では、マネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えないからだ。これは大学1年生の試験問題なので、安倍氏が自分で考えることをおすすめしたい。

いやいや、自分で説明して下さい。
本当は出来ないのではありませんか?
中銀のバランスシートをGDPと比べて意味があるようには思えません。日本はデフレによって名目GDPが縮小してきたのですから、分母が小さくなれば値が大きくなるのは当たり前です。
日銀のバランスシートの対GDP比が高いのだとすると、それは金融政策の失敗によるデフレで高まったということです。
また、池田氏も一つの文章の中で矛盾する内容を書く傾向があります。
文章の最初の方では「無制限に金融緩和するとハイパーインフレになる」と書いておきながら、次には「マネーを増やしてもマイルドインフレにはならない」と記載しています。
池田氏の見ている平行世界ではハイパーインフレにはなるがマイルドインフレにはならない経済が展開されているのかもしれませんが、それは現実ではないので余人には理解できないイマジネーションです。
一つの文章の中で矛盾する内容を記載する癖がある…
はて。
つい最近もそんな人がいたような。
共通項は「リフレ批判」ですが、不思議なことです。

全体として、まともな経済政策のブレーンがいないという印象はまぬがれない。

「まともでない」と池田氏が言うのは自由ですが、私なんぞは「江戸時代は実物経済だったのでインフレが起こらなかった」とか言ってのける「経済学者」の方がまともでないと思います。
池田信夫 blog : 史上最初の経済学者にして詐欺師、ジョン・ロー
江戸時代に金融経済があったとかインフレがあったとかいう話は山川出版社の教科書に載っている程度の話なので、このような水準の事柄も知らない、確認しないで「経済学者」が務まるという事の方が驚きですし、謎です。
どういう仕組みで「学者」になっているのでしょう。

特に1000兆円を超える政府債務をどうするのかという緊急の問題に言及しないで、「公共投資を増やす」とか「景気回復まで増税しない」というのは無責任もはなはだしい。首相としての資質で比較すると、野田首相のほうがずっとましだ。次の総選挙では「野田民主党」にがんばってほしい。

1000兆円を超える政府債務は緊急の課題ではないですね。
今のところ差し迫った事象は発生しておりません。
もし日本の債務問題が緊急の課題なら今頃ユーロ圏のように大騒ぎになるかCDSが上がるかしているでしょう。
ユーロ圏は緊縮財政に励んでいますが、危機を脱出することは全然できていませんね。むしろ政治不安を引き起こしています。
池田信夫氏はマニフェストほぼ全無視の日本民主党を応援するそうですから、ウソをつくことは大したことではないとお考えなのでしょう。