インフレ予想はいつ高まる?

タイトルからしてダメな記事っていうのも珍しい。日銀の詭弁術の威力は絶大です。

日銀総裁、デフレ脱却「供給構造転換を」 安易な緩和要求をけん制
日本経済新聞

「安易な緩和要求」とは具体的にはどんなものですか?具体性がないと単なる悪口です。「安易」だと思うのは日銀だけです。

日銀の白川方明総裁は12日都内で講演し、デフレ脱却を巡るいくつかの論点に触れた際に「持続的に需給ギャップを縮小させていくためには、潜在需要を顕在化させるよう経済の変化に合わせて供給構造を作りかえていくことが必要だ」と主張した。

これまた具体性が全然無いですねぇ。潜在需要を顕在化させる供給構造、って言うのは自由に出来ますが、具体例が無いと何が言いたいのかよくわかりません。妄想でいいなら何でも空想できます。

また、デフレからの脱却やインフレ予想の上昇という点でも成長力強化が重要であることも改めて指摘した。

「成長力」という言葉も、従来の白川総裁の発言から推察するなら「潜在成長力」のことなのでしょうけれども、生産の上限が上がるとインフレになるという理屈が理解できないのですよね。供給が増えてインフレになるのは何故なの。

一方、デフレ脱却のために日銀による資金供給を一段と拡大すべきだという考えに対しては「マネーを増やせば物価が上がるという貨幣数量説はゼロ金利が続く経済では現実を説明できない」

「単純な貨幣数量説」を唱えているリフレ派などいませんよ。
「単純な貨幣数量説」は成り立たない、とリフレ派の代表格である岩田規久男教授も明言されています。

デフレと超円高 (講談社現代新書)

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話は真逆であって、「単純な貨幣数量説」が成り立たないからこそ、貨幣供給を行うことで生産と雇用が増えるという考え方なのです。
生産と雇用が増え、雇える人を探すのに苦労するようになると賃金が上がり、その結果として物価も上昇し始めるのです。
「マネーを増やせば物価が上がる」などという主張ではありません。
ま、これも日銀おなじみの藁人形論法です。人が言ってもいないことを言ったことにして否定する一人芝居です。

「マネタリーベースが増えること以上に重要なのは、成長力の強化を通じてマネーの回転速度を引き上げること」と述べ、日銀への安易な緩和要求をけん制した。

成長力の強化がマネーの回転速度を上げるのかどうかわかりませんし、そもそも「成長力」という言葉をどういった意味で使っているのか不明瞭、これは意図的な不明瞭さなのだと思いますが、であるので、真偽のほどは勿論わかりません。
しかし興味深いのは、日銀を応援する「学者」は「カネをぐるぐる回しても実体経済は良くならない」と言っていることですね。この「学者」は「白川総裁は賢明だ」とゴマをすりまくっていますが当の白川総裁は「カネをぐるぐる回せ」と仰っているわけですね。
「学者」は専門家の筈なのにこんなグダグダなことで大丈夫なんでしょうか。諭吉先生が草葉の陰で泣いていますよ。あの学校の教育水準は大丈夫なんですかね。主張や素性の怪しい教員が目立ちすぎていませんか。

また物価も賃金も上がらないという状況が長く続いた経済下では「いきなり人々のインフレ予想だけが先行して高まると考えるのは現実的ではない」と述べ、高すぎるインフレ目標の設定を否定した。

また誤魔化しなんですけどね、「人々」というのは我々一般人ではありませんよ。一般の人達が金融政策に詳しいはずが無いじゃありませんか。普通の人達は日銀の政策の意味なんてわかりませんよ。
これも岩田教授の著作では明言されていますが、この手の話題で「人々」と言われているのは専門的に取引をしている人々のことです。
また、白川総裁の発言で露骨に矛盾しているのは、「インフレ予想だけが先行して高まると考えるのは現実的ではない」という部分です。
白川総裁、「予想」というのは必ず「先行」するものですよ。
事後に現れる「予想」などこの世に存在しません。存在しえません。気は確かですか?

そして、「高すぎるインフレ目標」とは何%のことなのでしょうか?
具体的に数字を上げていただかないと誰にも分からない発言になってしまいます。
少なくとも安倍自民党総裁の挙げている「3%」という数字は高すぎる目標ではありません。
確かな理解に基づいた妥当な数字です。*1

*1:4%でも別に高すぎません。クルーグマン氏は4%という数字を推奨しています。