量的緩和は景気を回復させる 2

リフレインが叫んでしまいます。

量的緩和は景気を悪化させる
小幡 績 :慶應義塾大学准教授 2012年11月13日
http://toyokeizai.net/articles/-/11687
量的緩和は景気を悪化させる。
私はまじめに言っている。そして、これは小幡績という主流派でない経済学者の奇をてらった見方ではない。なぜなら、これが20世紀の最も重要な経済理論に関する書物である、ケインズの一般理論のエッセンスであり、メッセージだからだ。
実は、バーナンキ(米FRB議長)ですら、この事実に部分的に気づいており、賢明な白川方明総裁は、よく分かっている。

バーナンキ(米FRB議長)ですら、この事実に部分的に気づいており
ネットで根拠を挙げながら論じる時にはリンクを貼るとか記事を引用するとかいう方法があります。実行しましょう。

整理して考えてみよう。
量的緩和を行わざるを得ない状況とは、金利は極限まで下がっているということである。実質ゼロ金利のとき、銀行などの金融機関を含む投資家には(銀行とは投資家であることを忘れてはならない)、手元の資金の活用手段として、二つの選択肢がある。それは、実物市場に投資するか、証券市場に投資するかだ。

この書き方はよくないですね。誤魔化そうという意図がそこはかとなく感じられます。
現在下がっているのは名目金利です。
実質金利はデフレによって高い状態です。
しかしこの筆者は「実質ゼロ金利」というとても紛らわしい言葉を故意に使用しています。
この筆者が言う「実質」とは「名目金利がほとんどゼロ」という意味ですが、詳しくない人は知識が混乱してしまうでしょう。あとで批判されても言い逃れできるレトリックを使っていますね。
最近の白川総裁の談話にも同じ印象を抱きました。多分、誰かがこのような修辞技法を入れ知恵しているのでしょう。まぁ官僚に決まっているんですけれども。

証券市場への投資とは、もちろん、国債や株式などの金融商品への投資であり、投資と言うが、要は買うということだ。この金融商品穀物や資源などのいわゆる商品、実物資産も含まれるようになったのがこの10年の特徴だ。
しかし、これは新規の投資を促すわけではない。すでに市場に流通している証券の価格への買いが増えて値上がりするだけのことなのだ。だから、流通市場はセカンダリーマーケットと呼ばれる。トヨタ自動車の株価が上がっても、トヨタはそれだけで投資は増やさない。トヨタの車が売れる見込みが高まれば投資するだけのことであり、資金調達にも困っていないトヨタは、セカンダリーマーケットの株価で実物投資の水準を変化させない。

いいえ、促します。
日銀や官僚に媚びへつらって詭弁を弄する方々に共通する特徴ですが、事実やデータを無視して理屈をこねくり回すことで読者を煙にまこうとします。
株価が上昇すると設備投資が増えるという現象はデータが挙がっているのです。

日本銀行デフレの番人 日経プレミアシリーズ

日本銀行デフレの番人 日経プレミアシリーズ

この本の213ページです。データの出どころも明記された、相関係数0.89のグラフをご覧になると良いと思います。
この記事はこの後もグダグダといろいろな「想定」を書き連ねているのですが、事実やデータの裏付けは全く示しません。
「こうなるかもしれない」という想像が書かれているだけです。
難しいことがわからなくても、量的緩和を繰り返しているアメリカではデフレを回避し、最近では雇用も増えてきているのが現実です。
仕事が増えているにも関わらず「実体経済は良くならない」と強弁するのには無理があります。

だから、ケインズにとっては、金融政策ではなく、財政政策による実需の喚起が必要なのであり、直接、実体経済の需要を生み出し、失業を減らし、所得を増やさないといけないのだ。

金融政策と財政政策は二律背反のものではありません。両立できます。
この辺の言い分は非論理的というよりは、論理が存在しないと言う方が適切なように思います。この人には金融政策と財政政策が両立しない理由を説明して欲しいと思うのですね。クルーグマン氏もバーナンキ氏もこれら2つの政策の併用を主張していますし、日本のリフレ派の学者も同じですし、昭和恐慌を克服した高橋是清もそうしました。
特に是清の場合は恐慌を2年足らずで克服したという事実があるのですから、この筆者の言い分と事実が矛盾している理由を説明して欲しいと思います。
自分の考えに合わないからという理由で、現に存在している物事から目をそらしてはいけません。

バーナンキ議長もだからこそ国債ではなく、MBS資産担保証券)を買い、金融商品を買ったとしても、それが実需を生み出すようなものに絞ってやっている。

これは単に間違いないし嘘。
QEでは国債を大量に購入しています。
アメリカFRBの金融緩和(QE1・QE2)の内容
データや事実にあたらずに学者が務まるのが世の中なんですね。イージーモードです。何故でしょう。経歴?

日銀の成長基盤融資も、今回の企業融資をする金融機関への日銀の無限資金供給も、同じく実需への資金の流れを促そうとする苦肉の策なのだ。
日銀が10月末の政策決定会合で打ち出したで「貸出支援基金」も、証券市場で証券を買うのではなく、実体経済に新規に資金が流入することを促すことを狙ったもので、この議論の流れに沿ったものだ。

この人は一つの文章のなかでしばしば矛盾したことを書く特徴があります。
この記事の前の方で、

日本の低金利は長期に継続しているから、優良な住宅ローンも優良企業も、もう残っていない。とことん貸しつくしているからだ。そうなると、ある程度リスクのあるところに貸さざるを得ない。そうなると、2%でも難しく、ビジネスとして成り立たせるためにはたとえば4%の金利が必要になる。しかし、それでは誰も借りてくれない。さらに、これまでの融資先の大半を占める優良企業は自分で直接、資金調達できるようになっており、融資の拡大どころか、減少となり、ますます銀行の基盤は減り、資金の運用先を探すのに苦労するようになっている。

つまり、優良企業は自前の資金があるのでカネを借りないと書いているのです。
貸そうとするならリスクのあるところに貸さざるを得ないと。
となると、日銀の「成長基盤融資」とやらは、返済能力に問題のあるリスク企業にカネを貸すということになってしまいますね。
円の信認が崩れたらどうしてくれるつもりなのでしょうか。*1

*1:冗談。そんなものは気にしなくて良い。