日本農業とTPPはまた別のこと。

TPPに関して「日本農業を外国から守れ。」という何気に話をずらした論法が使われているように思います。今の状態で全部自由化したら相当困る農業分野も出てくるのは確かでしょうが、それを守らなくてはならないのかどうかから検討するべきなのに、「守る」というところから話が始まっている所に違和感を覚えます。
守る、というのは誰の利益を守るのかが検討されていないように思います。みんながそれぞれの利益をもっていてそれを守るようにコミュニケーションするのは当然ですから、現在ある種の農業のあり方で利益を得ている人々がそれを擁護するのは当たり前です。ただ問題なのはその利益を得ているのがどれくらいの人々なのかということです。もしそれが極僅かな人々の利益にしかなっておらず、社会にいる大多数の人々にとっては不利益になっているようであれば改革するべきなのでしょう。
こういう問題は善悪の問題ではないし、大和民族対外国勢力といったナショナリズムの問題でもなく、利益配分の問題です。取られる人は当然不満でしょうが、それでも配分しなおさないと経済全体のパフォーマンスが悪くなってしまいます。ごく一部の人々だけが優遇されることをどうやって正当化できるかが問題です。
ウォール街を占拠せよ」という運動は推進している勢力があまり確かな思想をもっていないという問題点が指摘されているわけですが、それでも「ごく一部の者を優遇して大多数を苦しめるのは間違っている。」という主張には説得力があります。倫理的に説得力があるのではなく、現実に経済のパフォーマンスが悪くなって国が傾いているのが見えるから説得力があるわけです。
日本農業の問題もそれに似て、TPPがあろうがなかろうが以前からその非効率性が問題視されてきたわけで、TPPに参加するかどうかだけが是非ではないという点が大事だと思います。TPPに参加しないとしても、今のように兼業農家優遇で消費者に高い米を買わせているのが果たして社会的に妥当なのかどうかは話し合われるべきだろうと考えます。