既存メディアとネットは同等に…

日本人のパン食「小麦買わせるアメリカの陰謀だ」 : J-CASTテレビウォッチ

日本人のパン食「小麦買わせるアメリカの陰謀だ」
2011/3/ 2 12:43
前略
それはそうと、スタジオではコメンテイターの鳥越俊太郎が、米とパンに民族主義と「陰謀」を練り込んでいた。曰く、日本人はもともとお米を食べてたのに、GHQが来て給食をはじめ、そこにパンを導入した。これが日本人が米を食わなくなり、食料自給率を下げた原因である。
鳥越は面白半分〜面白1/3といった感じで、こう叫んだ。「日本が『パン化』した。これはアメリカの小麦粉を消費させようというアメリカの陰謀です!」。

「根拠不明瞭なことは『正統な』メディアでは載せてはならない」という思い込みがいつの間にか私の中にはあったものですから、テレビ朝日が「911テロはアメリカの陰謀」という番組を放送していたのを見た時には驚きましたし、「これって何かに支障ないのだろうか?」と考えました。
しかしちょっと考えてみると訴訟を起こされるとか処罰されるとかいう利害関係やルールは存在せず、「あ、テレビはデタラメを放送しても良いのだ」という事実に思い至りました。
これは新鮮な驚きでしたね。
「ネットにあがる内容は信頼できない。だから既存メディアを信頼して。(買え。)」という主張にぜーんぜん説得力を感じ無いわけですが、それはネットも既存メディアも内容の真実性を担保できない点において全く同等だからです。
商品になる情報を探したり作ったりして提供する仕事は既存メディアでないと出来ませんから、そこにはネットにない価値がありますが、提供された情報に接する道具としてはネットの方が圧倒的に速く、自分のペースで使え、考えて情報摂取する余裕があり、利害関係の無い一般人の意見をとりいれていけるので、情報へのリテラシーを踏まえて使えるメディアとしてネットの方が優れているのです。
特に時事問題を扱うメディアとして優れています。
もうすこし時間的な幅の大きい対象や内容の普遍性の高いものは書籍を利用する方がまとまった勉強ができるといえます。
ネットで知った情報を書籍で補強する、あるいは今まで縁の薄かったジャンルの本をネットで紹介されて自分の世界が広がる、といったコンビネーションが自ら学んでいく際に非常に有効です。
言うまでもなくデタラメが記載された書籍も日々大量に発行されていますが、正しさの頻度においてどのメディアも同じなのですから、これは自由な社会の代償といえましょう。
書籍どころか学校で作られ使用される教材や、そこで行われるイベントでもテレ朝の番組で語られるような陰謀論が展開されることは結構あるくらいです。
教育の場で発せられる考えはもちろん真実性の高いものでなくてはなりません。そのために根拠をあたるのは当然の職責です。
が、現実にはそうではないんですよね。
911テロがアメリカの陰謀だの戦後の小麦援助はアメリカの陰謀だのといった考えが教材や学校イベントで堂々と語られてしまうのです。
小麦の消費量増加がアメリカの陰謀の結果だとすると、たとえば肉や果物は5〜6割が輸入ですから食料自給率を下げる効果を生じさせており、これも陰謀かもしれません。
お金持ちが外車に乗るなら自動車自給率(笑)を下げているのですから、これはドイツの陰謀でしょう。
きっと日本人を洗脳して無駄な贅沢をする価値観を植えつけたのです。
バナナはフィリピンの陰謀で食べるようになったのだろうし(貧しい頃の日本では贅沢品だったのに!)、安物衣類自給率が低いのはもちろん中国の策略です。
ブランド品はイタリア。
ワインはフランス。
コンビニにタコスが置いてあるのはメキシコが浸透したのでしょう。
ほとんど総攻撃されていますね。大変です。
そういえば日本は小麦や大豆をほとんど輸入に頼っていますから、うどんや醤油は売国食品です。消費をやめましょう。
鶏卵の自給率が高いのはきっと、鶏卵農家が人知れず外国勢力と戦う隠然とした勢力をもつ愛国集団だからでしょう。
つまり、私たちが豊かになってさまざまな物品の選択肢を得られるようになったのは全部陰謀のせいなのです。
日本人が貧しく、選択肢の少ない停滞した社会で暮らすようになったとき、テレ朝は満足気に「それで良い」と告げることでしょう。