陸奥話記

前九年の役における源頼義の活躍をえがいた軍記物。
淡々としていてなんか文学性には欠けるけれども、読みやすいリアリズムの書き方。

陸奥話記 (古典文庫 (70))

陸奥話記 (古典文庫 (70))

蝦夷を制圧したことについて「坂上田村麻呂以来の大勝利」とたたえられております。
この話を読んでいて面白かったことをいくつか。

平安時代の戦だが、60歳をこえても出陣している

頼義自身も既に年寄りでしたけど、家来の中にも60歳をこえて出ている者がいて、昔の人もなかなか大変だったんだなあ、と思う反面、頑健な人たちだな、と思います。
10年にわたる間、断続的に戦場を駆け回るのですから貴族でも下のほうだと苦労したんですねえ。甲冑にシラミがわくような環境で戦い続けるなんて、華やかな合戦絵巻などという言葉はまったくそぐわないリアリティです。

武器やら戦術やら

頼義の息子、源義家は甲冑三領を射抜く強弓を扱う強者で、騎乗のままで敵を過たずに射落としたとか。得意な戦術は、敵の攻撃をかいくぐって側面から攻撃することだったそうです。
律令制のころの軍団は弩(クロス・ボウ)を用いていたとのことですが、このころの武士も状況によっては使っていたのですね。陸奥話記には、城攻めの際に弩を使用する場面が登場しました。
また、城から出てきた敵が、死ぬつもりで戦っている時には官軍をてこずらせたのに、道を開けられて逃げることが先にたってしまった時に側面攻撃されて全滅させられた、という場面などは防御しながら逃げる難しさを熟知した戦術だなあと思いました。