許されない許せない

主人公が現実の自分や家族を受け入れられずに七転八倒する原因として、内面的な要因と社会的な要因とがあげられており、その辺もバランス感覚のある作品だと思います。
主人公の妻は「みんなが将軍になる必要なんてないじゃないの」といい、よくできた女性です。このような良い女性と共にいられる幸運を理解していたら、自分から死へと向かうことはないのですが、心理的に問題を抱えた人間は欠落や欠点にばかり目がいきがちなものです。
どれだけ貧乏でも主人公に生きていてほしいと願う妻がいるのに、自分の存在より金を残すことの方を選択する主人公は、人生に失敗したかどうかとは関係なく、自分が許される存在だと感じられていないという点で病んでいるのです。
自分が許される存在だとは露ほども思わない故に成功者たりえない息子をも許せず、ますます不幸になっていきます。