自意識の問題

50年以上前に書かれた作品ですが、現代日本に暮らす我々の自意識の問題とか階層上昇への努力にまつわるストレスの問題など、いまだに鮮度の落ちない問題意識が読み取れます。
この50年来それほど社会が変わっていないということなのかしら。
自分の人生が社会的には失敗であったことを認められず、息子がその失敗を補うのに足る器量でないことも認められない主人公は死ぬしかないし、死んでもらわないと困るわけですが、それにしても、ある種の読者につきつけるその洞察は大変厳しいものであります。
このように正しく不愉快な作品が名作として認められていて広く認知されているのはアメリカ社会の懐の広さを感じさせます。こういう激しく苦悩する書き手が登場するような問題を抱えているにしても。