芸の道は険しい

そのような芸はちょっとやそっとで表せるようなものではないのですが、小説という表現技法に手を染めることがあまりにもありふれてしまって、「役にたたない内容で音も動きも伴わずに感動させる」ことの高度さに思い至らない作り手は多いです。
なんというか、「曲を書くとか絵を描くとか映画をとるとかができないので、字は書けるから小説で書く」という態度ですかね。
別にそれが出発点でもいいと思うし、それこそ色んな人が表現者になる可能性を齎してくれる部分だとは思いますが、特殊技能なしで優れた表現者たるのには滅茶苦茶大変なんだ、という意識は欠けているような。
同人誌やネットで見かける漫画やイラストだと、素人でも恐ろしいくらいに上手い人がいて、日本のオタクはさすがだな、とか思うことがよくありますが、ネットに発表されている小説で同じ感想を抱くことは非常にまれです。
字を書ける人の方が絵を上手く描ける人よりも圧倒的に多いのにも関わらず、です。
それくらい難しいということでしょう。
それに加えてもっとしんどい話なのですが、売れるライトノベルとそうでないものの差異は「表紙で決まる」と関係者があっさり断言しているのを目にしたことがあります。
事実でしょうね。冷徹ですが。
文章がメインコンテンツなのに、実際に売り上げを決定付けるのは表紙絵なのですからげんなりです。
才能と努力が伴って、もし優れた小説を書くことができていても従。訴求力のある可愛いイラストが主。
文章は受け取り手の努力を要求するという時点で不利。読んでもらうまでが厳しいという状況です。