どうして小説を読まなくなるのか

子供のころは物語を、思春期には小説を熱心に読んでいたのに、なぜいつの間にか「卒業」してしまうのか、を考えてみたのですが、これは問題の立て方がむしろ逆なのではないかと思いました。
人類が登場してから、芸術のような役にたたない活動を始めるまでに十五万年かかったそうですが、誰にとっても自明なのは、小説は食っていくとか建設するとか、そういう実のある活動に対してはそもそも役に立たないものです。
ブログなんか書いているとひしひしとわかるのですが、私の書くやくたいもないことなど、読む人はほとんどおりません。内容がありませんから。
私の方も、日記系ブログによくあるような恋愛だの旅行だので感じたよしなしごとを読む気も暇も持ち合わせません。
ですから、役にたたないものが喜んで読まれることがあるということの方が驚きだと思うんですね、むしろ。
村上春樹さんの小説にも私は若いころに熱中していたのですが、そのころ考えていたのは、「どういう意味のあるストーリーなのかよくわからないのに、どうしてこんなに面白いのだろう」ということ。
役にたつどころか、意味するところも曖昧なのに、多くの人々を惹きつけることができるということに感嘆の念を抱いたものです。