マイナス金利を拡大できるか


有効求人倍率が全国で1を超えたり、24年ぶりくらいで1.26倍になったりと、実体経済上の数字は良いものがあがっていますが、原油価格低落の影響でインフレ率が伸びず、その一点だけで金融政策限界論が語られています。
何のための金融政策か今だに分かっていないということですし、原油コストの低下でインフレ率が上がらないのであれば、生産面にはプラスの影響がある「良いデフレ」なのですが・・・

増えるマネー、上がらぬ物価 日銀資金供給 初の400兆円超え
2016/7/5 0:26 日経
 日銀が供給するマネーの総額が6月末に初めて400兆円を超えた。日銀は資金供給を増やせば脱デフレが実現できると主張するが、足元の物価は前年の水準を下回り、日銀が目指す2%の物価上昇は遠い。市場の一部では追加緩和期待もくすぶる一方、金融政策の限界も近づきつつある。

原油価格の低下が資産市場に悪影響をもたらすのでなければ「良いデフレ」は放置しても良いのでしょうが、生産コストの低下と資産市場の悪化のどちらの影響が大きいのか分からないので、念のために追加緩和するのが良いのかもしれません。
ただ、1〜3月期のGDP統計は割と良いものでした。原油価格低下のコストへのプラス効果は世界のどの国にも生じるので、その辺のおかげかもしれません。

イナス金利の拡大がなぜ出来ない?

食料とエネルギーを除いたインフレ率は高くなってきているので、マネタリーベースを中間目標としている金融政策が効いていないということはありません。ただ、原油価格の低下は生産・輸送のコストを全般的に下げますから、その影響を完全に除くことはできず、食料とエネルギーを除いたインフレ率の伸びが鈍化するのも仕方ありません。
原油価格の低下は、中国経済の伸び悩みによる需要減少や、シェールオイルを潰すための供給増加といったことが原因で、日銀の制御できることではありません。対処のために金融緩和量を増やすという手も悪くはないのでしょうが、世界的な要因に真正面から挑むよりは、インフレ率に依存しない緩和策、マイナス金利の拡大の方が確実性が高いと思います。
マイナス金利を拡大すると預金金利がマイナスになるのではないかという懸念が出されることがありますが、欧州では−1%くらいの金利にしている国もありますが、預金金利がマイナスになっている国はありません。
せっかくマイナス金利を導入したのですから、今こそ果敢に拡大するべきときだと思うのですが、どうもやれなさそうな苦渋の表情が伺えます。
銀行が自信まんまんで日銀に逆らう様子を観察するに、やはりここにも天下りの悪影響があるのではないかと思います。
日銀は今も準備金の大半にプラスの付利をしており、銀行業界には年間2000億円の不労所得が転がり込んでいるのですが、そのように優遇されていてもなお、日銀の政策を正面切って批判してくるのですから、まったく鼻持ちならない特権意識であります。
銀行の反抗といい、ゆうちょが国債しか買えない馬鹿げた状態にあることといい、結局は公務員制度の構造改革がないと金融政策の効果も減殺されてしまうということだと思います。
参議院選挙や都知事選挙では、構造改革が出来る政党が伸びて欲しいと思います。