危険な楽観(財政)

積極財政主義者は財政に関して誤ったことか危険なことばかり言います。

府資産があるから財政は健全説

政府資産に売却できるものが350兆円ほどあるから、日本の政府債務は問題ない、という意見があります。
(売れないものも含めて語る人は日本のインフラも売却するつもりなのでしょう)
この意見は当然のことながら、財務省の見解と真っ向から対立しています。
財務省は、政府資産の8割は売却できないとしています。
政府の負債と資産 : 財務省
債務が膨大だから増税しなければならない、という政策が提案されている以上、もし売却できる資産があるなら、大問題です。
この問題はいつまでも曖昧にされておくべきではなく、早期に決着をつけるべきです。
テレビの生放送で、売却可能派と同調する国会議員、財務省の代表者と同調する国会議員を集めて、関係法律の専門家も交えて直接討論するべきではないでしょうか?
どちらが正しいのか、何千万人もの国民に明らかになりますから、選挙にも影響を与え、正しい方が政策として採用されると思います。
討論に財務省が応じなかったら、その旨放送すれば同じような効果があると思います。
売却可能派はマスコミや国会議員にコネを持つ人が何人もいるのですから、実現可能なことだと思います。
ただ、政府関連法人を民営化して債務を軽くするという案には疑問を感じます。
政府関連法人を民営化するかどうかは、その法人の仕事が民間に可能かどうかで判定する構造改革問題だと思います。
単に政府債務を軽くするという目的で、本当は必要な法人を民営化するのは筋違いになってしまいます。
このような法人を民営化する正当性を主張するなら、いかにそれら法人が政府関連としては要らないかを論証するべきかと思いました。

保有の政府債務を無限借り換えすれば良い説

この説に関しては、私はまったく反対です。
日銀保有の政府債務を無限借り換えするということは、何も生み出さない金を無限に回し続けるということであり、そのための労力・時間・職員の給与・その他の経費や天然資源、がまるごと無駄になります。
日銀保有の政府債務をコンソル債にしても利払いの分はまるごと無駄になります。
また、日銀の無限借り換えを認めたときに非常に問題になるのは、財政の非効率化です。
現在の日本の財政にも非効率的なところがあり、国民にとって役に立たないもの(あまり使われないインフラ)や、有害なもの(減反政策)があり、他人のカネを合法的に盗むシステムと化しています。
そうはいっても日本の全ての官僚や政治家の心がけが悪いわけではないので、効率的な財政運営をしよう、という意思が存在しないわけではありません。財政資金が有限なものであり、できるだけ効率的に使わなければ国民や社会に被害を与えるという意識があるからです。
しかし、政府債務をぜんぶ日銀に買わせて、それを無限借り換えすれば良い、という手法がまかり通ると、財政資金は無限にあることになります。
無限に債務を発行すると悪性インフレになるという心配がありますが、おそらく無限借り換え派は、法定準備率の操作でインフレ率を制御できると考えているのでしょう。
ちなみに彼らは、準備金への付利を使うことは主張しないと思います。マイナス金利には緩和効果がないと言っていた人びとですので、逆に付利しても引き締め効果がないはずですから。
ただ、法定準備率の操作だけでインフレ率が制御できるのかどうかは怪しいものではあります。現在の金融緩和局面で、複数の手法をとってもなかなかインフレ率が上がらないというのに、引き締めはただひとつの方法でできるというのは信じがたいことであります。
ここでは仮にインフレ率の制御ができるとして、財政資金が無限に調達できるとなると、効率的に使うインセンティブが無くなってしまいます。
どんな無駄遣いをしても、たとえば鳥取にピラミッドを作るとか、完全再現大坂城を作るとかして観光名所としても問題がないことになります。債務はぜんぶ日銀に買わせて無限ロールオーバーするのですから。
もちろん、ピラミッドや完全再現大坂城は土地という希少な資源を無駄遣いするのであり、それはいかんともしがたく批判の対象になるべきものになるはずですが、現在のように財政が有限だと思われている状況でも、各地に無駄なハコモノが税金を使って建てられていることを思えば、無限財政資金の下では無駄なハコモノが際限なく作られることは確実であります。
だって既得権者が儲かるもの。
そうならない理由がありません。
つまり、日銀無限借り換えを主張する人は地方の無駄なハコモノを批判する講演会なんぞやる必要がないわけであります。
無駄なハコモノを土地がある限り作っても、その財政資金はぜんぶ無限ロールオーバーすればいいわけでね。
そんな講演会をやっているはずがありません。多分。
もしやっているのだとしたら矛盾なんですけれども、無限借り換えを主張する人が、政府資産があるから日本の財政は健全だ、というのも矛盾なんですよね。
政府資産は必要ないじゃないですか。
政府債務はいますぐ全額買い取ってコンソル債にして、利回りだけぐるぐる永久に回せばいいだけなんですから。
弊害なんて無いわけでしょ?
この辺も理解しがたいところです。
在野リフレ派、積極財政派が無限借り換えのようなご都合主義的なアイデアに飛びついてしまうのは、彼らの関心が歪だからです。
マクロ脳。
しかも安定化にしか関心を持たない。
彼らの発言で違和感を覚えるのは、彼らが常に抽象的な額や量にしか言及しないというところです。
何を、どのようにするのか、という点には全然関心を示さない。
あのような態度が経済学的だとは思えないです。
経済政策は本来は人びとの便益を増大させるためにやるものなのであって、インフレ率やGDPの額は目安に過ぎません。
それらの抽象的な数字に本質的な意味などありません。
そういった数字を目的にして、そのために賃金だの債務だのの数字をつじつま合わせする奇抜なアイデアに大喜びするという心性は実に奇妙なものであります。
あのような人たちはおそらく、便益があれば採算が合わなくても必ずしも悪いことではない、という話を理解できないのではないでしょうか。