増税延期でも財政は悪化しない

毎日新聞の書くことだから間違っていて自然なんですけどね。

増税延期>財政さらに悪化 巨額債務の削減困難
毎日新聞 6月1日(水)20時37分配信
 消費税率10%への引き上げが2年半延期されることで、国と地方で計1000兆円を超える巨額の債務を抱える財政の一段の悪化は避けられない。債務削減の道筋を描くのは難しく、財政再建の道のりは険しい。

そんなに増税したいなら資産に課税するのも良いですよ。世の中には莫大な資産を持って不労所得を得ている人たちがいますし、それらにかかる税率が低いことが不公平を生み出していますから。
平等大好き毎日新聞はそういった提案をして財政再建に貢献してみてはどうでしょうか。

 政策経費を借金に頼らずに税収などでどれだけまかなえているかを示す基礎的財政収支プライマリーバランス=PB)を20年度に黒字化するという目標を、政府は維持する。

これは良い事です。アベノミクスが始まって以来、プライマリーバランスは好転を続けています。(−37兆円から−24兆円)その一方で、経済も拡大しています。2012年の名目GDPは475兆円。2015年は約500兆円。プライマリーバランスを均衡に向かわせても、不景気になることなどありません。金融政策を強化・工夫するべきです。単に国債の買取ペースを増やすのではなくて、もっと別の提案をしてみて欲しいです。

加緩和と補正予算

マイナス金利について国民の反発が強いから拡大するべきではないという意見があったのですが、これは意外と考慮するべきかなと私も思いました。政策効果より政治的な配慮の方が政策の遂行に重要だったりしますし。
ただ、インフレ率が上がりにくい今の状態は必ずしも緩和量が足りないというわけではなさそうですし、リフレ派嫌いの人が言うような、マネタリーベースを中間目標とする金融政策の効果がないというわけでもなさそうです。
「インフレーションの緩慢」という概念(仮説?)があるのですが、過去の低インフレに適応的期待があると、政策変更しても数年はインフレ率が変化しづらくなるという現象が日本以外でも観察されているんですよね。
日本はそれに加えて2014年の消費増税もあったので、インフレ率が上がりにくいとしても自然ではあります。
インフレ率の上がりにくさをふまえて確実性の高い政策を行うとなると、やはりマイナス金利の拡大が良いと思います。やれば必ずその分実質金利が下がりますから。
現在の実質利子率がマイナス圏にあるとしても、それは自然利子率との対比で効果的かどうかが決まるわけで、自然利子率の方が深いマイナスにあるなら、実質金利をもっと下げるべきだということになります。この辺は推測するしかありませんが。
補正予算について、5〜6兆円にするべきだ、というトーンダウンの意見も見ました。
昨日のエントリにも書いたのですが、予定通り10兆円出すべきだと思います。
10兆円だすことに対して、財政再建の立場から批判はあるでしょう。
しかし、宣言しておいて出さなかったら、逆の立場からの批判があるでしょう。
私は財政政策のうち、減税には賛成ですが、政府支出の拡大には反対です。
しかし、10兆円の補正予算では通例どおり政府支出主体で財政出動するのが良いと思います。
なぜなら、今回10兆という数字が出てきたのは、産出ギャップが7〜8兆円あるから、それを上回る財政出動をすれば埋まる、景気がよくなる、インフレ率が上がる、という考えからだと思います。
であるなら、産出ギャップを下回る財政出動をしても、その考えの妥当性を確かめることができません。
この機会に確かめておくのは、どちらに転んでも損はないと思います。
もし有効であるなら、産出ギャップを上回る財政出動をすれば景気回復ができる、という方法が定式化できます。その後はそれを踏襲すれば良いです。財政赤字の問題を度外視すれば、その方法が景気回復に有効であることは私のような財政懐疑派も納得するでしょう。
逆に有効でないなら、景気回復に政府支出を増やしても大して意味がないということが確認でき、その後は行われにくくなるでしょう。
安定化政策に関する財政政策へのいい加減かつ曖昧な主張に決着をつけるためにも、政府支出主体で10兆円の補正予算をやってみるべきだと思います。