「最低賃金1000円」に反対する

最低賃金制が有害であることは経済学の教科書的常識ですから、大学の授業では普通に教えられているようなことだと思うのですが、安倍政権がやたらと最低賃金を上げることに熱意を持つようになったのは、消費増税の目くらましと労組票の獲得なのかもしれないと思うようになりました。
そう考えないとあまりにも不自然であります。
教科書に載る内容はその学問分野で標準的なものだと思うのですが、経済学の場合、標準的な内容でも学者自身が平気で真逆のことを言ってしまうので、部外者からは訳がわからないことになります。
理系の人から、「経済学って本当に科学なんですか?」とバカにされることがあるそうですが、バカにされても仕方ないと思います。
経済学が体系化に際して参考にしたといわれる物理学の分野で、物理学者が突然教科書と真逆の内容を主張しだし、実際に何かを造るときにも教科書とは真逆の理屈で造れと言い出すことは有り得ません。
「ボールを投げるとたまに空に向かって上昇していきます」などと物理学者がいうことは金輪際ないですが(精神を病んでいるのでもない限り)、経済学者はしばしばそれに類することをいいますから、世間のけっこうな数の人が経済学を胡散臭がるのも当然であります。

低賃金労働者の半分は世帯年収500万円以上

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/rd/046.html

  • 最低賃金労働者の割合が高いのは、中学、高校卒などの低学歴層
  • 年齢別では若年層、とりわけ10代で高くなっており、60歳以上の高齢労働者も高い傾向
  • 性労働者は、年齢層に関係なく高い
  • 年収が200万円以下の世帯の世帯主は2002年時点で9.5%にすぎない
  • 300万円以下でも15%弱
  • 最も多かったのは年収500万円以上の世帯の世帯員
  • 世帯主の配偶者がパート労働者として働いたり、もしくは世帯主の子供がアルバイトしていることを示す
  • 最低賃金の引き上げで本当に恩恵を受けるのは、むしろ中所得以上の世帯の世帯員
  • 10代の男性と中年の既婚女性に対して就業率を下げる効果

低賃金引き上げは貧困対策としてあまり有効な手段ではない

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/13j014.html

  • 日本において最低賃金引き上げで雇用が失われるという意味で被害を受けてきたのは、新規学卒者、子育てを終えて労働市場に再参入しようとしている既婚女性、低学歴層といった現時点で生産性が低い人たち
  • 勤労所得税額控除は、給付付き税額控除よりも、労働意欲の刺激効果が強い
  • 勤労所得税額控除と低めの最低賃金の組み合わせが望ましい

低賃金を上げることのデメリット

最低賃金の引き上げは貧困対策として有効か?

  • 最低賃金が労働者の生産性を上回ると解雇される可能性がでる
  • 最低賃金労働者は、ファミレス・スーパー・コンビニ・ビル清掃、などに多い。これらの業種はコストに占める人件費の割合が高いため、最低賃金の引き上げは経営を直撃する。そのため、人を機械で置き換える省力化投資が行われる可能性がある
  • 信販売やカスタマーサポートの電話受付は地方で行われることが多いが、最低賃金を引き上げると、これらの地方の仕事が失われる可能性がある