国立競技場の計画変更
新しい国立競技場の建設にカネがかかりすぎるので計画が変更になるとのことで、良いことなんだろうと思います。
ただ、日本のインフラの中では使い道がたくさんある方なので、建設費や維持費がかかる点について殊更に批判を浴びる対象ではないのですけれども、マスコミにとっては安倍批判の材料として目立つから丁度いいし、マスコミは日本の役に立つことが嫌いなので、役に立たないインフラにカネがかかる問題は取り上げずに田中角栄なんぞを持て囃し、国立競技場のように役立つものにはカネをかけさすまいと考えているのでしょう。
そこまで考えていないかもしれませんが、とにかく日本人の脚を引っ張りたいという意識で行動しているので、自然と彼らの目的に整合性のある言説になるのだと思います。
舛添が安倍政権を批判しています。
舛添知事ツイッター 新国立問題で首相を批判
2015年7月18日 東京新聞 夕刊
新国立競技場の建設計画見直しをめぐり、東京都の舛添要一知事は17日夜、自身の公式ツイッターで、政府が6月末に工費を2520億円と決定しながら、数週間後に安倍晋三首相が計画を「白紙撤回」したことに、「主張の整合性よりも内閣支持率が優先か」などと批判した。
計画をそのまま実行しても批判するし、変更しても批判する、という様子を観察するに、これはとにかく批判のための材料なんであって、各方面が連携して安部潰しに動いている状況証拠になるのだろうと思います。
森元首相は「2500億円くらい出せよ」と・・・
森氏 見直し容認も恨み節「たった2500億円出せなかったのかね」
スポニチアネックス 7月18日(土)8時56分配信
見直し決定後の同日午後には、都内の組織委オフィスで「施設に掛けるお金は都が3000億円。組織委が五輪に掛けるお金はその比ではない。国がたった2500億円も出せなかったのかね、という不満はある」と恨み節も。コスト削減を促す国際オリンピック委員会(IOC)の五輪改革の趣旨に沿う判断と認めつつ「日本スポーツの聖地としていろいろと生み出していけると夢を描いていただけに大変残念」と述べた。
この人らしいなぁ、という正直さであって、こういう工事にはドロドロしたものがからむのが常で、どうせ効率の良い工事計画になっていなかったのでしょうから、諸手をあげて賛成、ということを一般国民の立場からは言いにくいのですが、ただ、50年以上、国の中心で使用する競技場なんですから、特別ぜいたくに造っても良かったんじゃないかな、とは私も思います。
日本のインフラでは、他にもっとムダなもの、ムダな運営が沢山ありますから。
財政政策の面から
この問題についての人々の反応として私が注目していたのは、財政政策の景気への有効性を支持する立場から、どのようなものが出てくるだろうかということでした。
政府支出を増やすと景気が良くなるという説を私は信じていないのですが、信じている人はとても多く、日本では主流の考え方であります。財政政策の景気への有効性を否定すると、「変な人だ」と思われてしまいます。
政府が支出を増やすのが景気に良いのであれば、新国立競技場は出来るだけカネをかけて、維持費も多くかかる方が望ましいはずです。
私自身は、インフラをつくるのに効率を考えずにやたらとカネをかけても、一部の人の貯金になるにすぎず、実質的に多くのインフラを工事することができないので良くないと考えているのですが、景気に財政政策を役立てるという話は通常、金額しか問題になりません。
たとえば、GDPギャップが10兆円あるから財政を10兆円だせば埋まる、というお話。
この考え方でいけば、オリンピックにかかる費用は増やせば増やすほど良いのでは?
計画以上に費用がかさんでしまい、最終的にどれほどかかるか予想できないような事態になるのだとしても、5年後には必ず終わるプロジェクトなのですから、それまではどんどん予算を増やせばいいのに、と思います。
もし財政が景気に効くのであれば。
しかし実際には、景気に対して財政を重視する人たちの間からも、新国立競技場の建設費用は考え直すべきだ、という声が出てきています。
矛盾していると思います。
日本には財政問題はなく、政府債務も問題ではなく、一般財政予算は現状では足らず、安倍政権は緊縮財政を目指しているケシカラン新自由主義者であり、政府支出は金額しか問題にならない、のであれば、今回の計画見直しはむしろ批判されるべきではないのでしょうか?
安倍政権が費用の面で世論から批判を浴びているのであれば、今こそ一般国民に向かって、「政府支出を増やすのは景気に良いのだ。いまは消費が低調で、こういうときには政府がカネを使うしかないのだ」とアピールして、政権を擁護するべきではないのでしょうか?
なぜ真逆の反応が出ているのか、私にはさっぱり分かりません。
財政政策を景気に対して有効だと主張する人々は、その考えに基づいて政権や他の意見を持つ論者を批判することもあるのですから、整合性ある説明が国立競技場の件についてもできなくてはならないと思います。
そもそも、主張の整合性を一人で確かめる習慣も必要だろうと思います。
社会保障にかかる費用についても同じことが言えるのですが、政府支出や公務員の給料が多いほど良いなら、社会保障やインフラの維持にかかる政府支出がかさむだけでは、どうして景気が良くならないのでしょうね?
財政政策にかかるカネは公金なのですから、良いのかどうか分からないものについて支出せよと気軽に言うべきではないですね。
出せというのなら、根拠をちゃんと揃える必要があると思いますし、景気対策財政への批判に対しても答えないといけません。
都合の悪いことをスルーするなら、どんな論でもたてられます。