池田信夫が性懲りもなく間違いを繰り返す
デフレ時代にさんざん間違った発言を繰り返し、アベノミクス開始とともに事実によって叩きのめされた池田信夫が捲土重来を図っております。
アベノミクスが踊り場にきたのを好機とみたのでしょうが、学識がないのに経済学者を名乗る弱点が祟ってやっぱり間違いの連発をしています。
2014年05月10日12:15
供給力が下がってデフレは終わった
早川英男氏の発言が、市場で話題になっている。彼と私は学生時代から意見がほとんど同じだが、今度もそうだ。JBpressにも書いたように、景気循環の回復局面が終わり、黒田総裁も認めるようにGDPギャップがゼロになり、失業率も自然失業率に近づいた。
現在の失業率は3.6%だそうですが、これで自然失業率と呼ぶには高すぎます。
日本の失業率が3%超えたのは1995年で、GDPデフレーターでみてデフレになった翌年です。デフレという異常事態に陥って高まった数字が3%なのですから、現在の失業率が常態のわけがありません。
それを理解する上で重要なのは、潜在成長率という概念だ。これは日本経済の供給力の増加率を示すもので、成長率がこれより高いとインフレになり、低いとデフレになる。上の図のように2000年代には潜在成長率は0.8%まで下がり、今は0%ぐらいまで下がったのではないか、というのが早川氏の見立てだ。潜在GDPは複雑な推計なので断定的なことはいえないが、今の人手不足はGDPが潜在GDPとほぼ一致したことを示唆している。
現在の人手不足は経済全体に広がっているわけではなく、条件の悪いところや特殊な技能が必要なところに発生しているので、こんな評価は時期尚早。
もし経済全体に広がっていれば、名目賃金が全体の傾向として上昇するはずなので、池田信夫が「実質賃金がーっ」と騒いでいることと矛盾します。自分の言い分と矛盾したことを言うのは池田信夫の十八番。
昨年の実質成長率は(公共事業を除いて)ほぼゼロなので、これは潜在GDPが下がってGDPギャップがゼロになったということだ。
なぬ?
国民経済計算(GDP統計) - 内閣府
昨年の実質成長率は1.5%ですが、ここから公共事業をぬくと0になるという理路は?式は?
この大きな原因はエネルギー価格の上昇で、ここ3年で20%ぐらい上がり、潜在GDPを下げた。
エネルギー価格の上昇で潜在GDPが下がる?
となると世界的に潜在GDPは下がったことになりますから、世界同時インフレになるはずですな。
ユーロ圏がデフレに嵌りつつある理由を説明してみろや。
株式市場はちょっと明るくなったが、元に戻ってしまった。失業率も実質GDPも、リーマン・ショックの前に戻っただけだ。上場企業は増益にわいているが、中小の景気動向指数はマイナスだ。しかし人手不足がひどくなってきたので、これから名目賃金が上がるだろう。
そうすると物価も上がるので、日銀の目標2%は(コアCPIでは)達成できる可能性がある。しかし今のコアコア0.7%でGDPギャップがほぼゼロなのだから、これ以上インフレになると、供給不足になってGDPが下がる。これは石油危機のときのようなスタグフレーションである。
生産性の上昇以上に名目賃金が上がればスタグフレーションになりますが、日本の企業がそんなに気前がいいわけない。
もう一つのリスクは、長期金利が上がることだ。今までは日銀のリフレ政策を市場が信じていないので長期金利は0.6%程度で落ち着いているが、本当に2%のインフレが起こると思ったら、金利は上がるだろう。邦銀は200兆円以上の国債を保有しているので、金利が1%上がるだけで15兆円ぐらいの評価損を抱える。
資産を組み替えるとか、物価連動債に替えるとか、日銀に買ってもらうとかしたらええがな。
これは短期的には、日銀がどんどん国債を買って金融抑圧を続ければ防げる。
短期っていうのがどれくらいを指すのか不明確ですが、景気が回復したら金利が上がるのは当然だし、景気が回復してインフレ率が2%に到達していたり、名目成長率が4%くらいになっているのに金融抑圧を続けるはずがないので、極めてバカな「分析」。
株式市場の「期待」をふくらませて回復を早めたのは黒田総裁の功績だが、GDPは期待どおり上がらなかった。潜在GDPが下がってデフレは終わったのだ。これから起こりうるシナリオは、石油危機のような供給ショックによる大インフレか、バブル崩壊のような金融危機だ。黒田氏はそろそろ「デフレ脱却宣言」を出し、出口戦略を考えてはどうだろうか。
供給ショックで大インフレになったなどという事実はありません。
このエントリの最後にも書いたんですが、オイルショック時にインフレになったのは金融政策の失敗が原因です。その証拠に、第二次オイルショックのときに日本は悪性インフレになっていません。池田信夫はこの辺を説明するべきでしょうな。
また、バブル崩壊が引き起こすのは皆さんご存知のとおりデフレですから、「大インフレかデフレのどちらかが起こる」と真逆のことを並列して述べているわけで、これまたどういう理路で真逆の現象が選択的に発生するのか説明してもらいたいもんですな。
できないと思うけど。