デフレの前に公共事業は無力

供給力不足で需要にならないのですから、当たり前ですけど。
国土強靭派の欺瞞というのは、公共事業推進が国民の安全確保なのか、デフレ脱却の手段なのか、という点を曖昧にしている点です。
二股かけて、どちらかに引っかかる層を公共事業推進に引きこもうという戦術でしょう。
しかし、残念なことに公共事業は日本の環境を破壊し、国家債務を莫大に積み上げ、一部の人間に税金を吸わせる不公正を働いてきながら、日本経済の回復には何の役にもたちませんでした。
これは「意見」ではなく、90年代の事実が物語っています。
本格的なデフレに入る以前の時期なら財政政策で経済が改善したこともありましたが、小渕政権を見れば分かる通り、財政再建をかなぐり捨てたなりふり構わぬ財政政策を展開しても焼け石に水でありました。

98年から2000年が小渕政権、2001年からが小泉政権です。
道路公団を民営化し、公共事業を減らしたことで国土強靭派がさかんに批判する小泉政権ですが、御存知の通り量的緩和が実施された時代でもありますので、インフレ率でみると一目瞭然の結果が出ております。
このような事実があるなか、三橋貴明十年一日のごとく同じ間違いを反復しています。

それどころか、提言にもある通り、道路公団民営化に際して高速道路の管理費を30%削減し、事業仕分けで直轄国土の維持管理費を20%削減することを決めました。お分かりでしょうが、道路公団「民営化」も、事業仕分けという「政府支出削減策」も、共に「デフレ促進策」です。
 デフレ期にデフレ促進策を強行し、
「改革だ!」
「無駄の削減だ!」
 と喝采をあげ、道路のメンテナンスを疎かにし、国民が自らの安全を脅かしつつ、デフレ進行で貧困化していったというのが平成の日本なのでございます。
 何をやっているんだ、と思わなければ、あまりにも愚かでしょう。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/

あまりに愚かなのは三橋の方だと思いますが、まず第一に、民営化はデフレ促進策ではありません。
国鉄電電公社も民営化されましたが、それでデフレになったということはなく、JRなどは三橋も大好きな新幹線の建造に今も励んでいますし、NTTになったことで魅力的な携帯電話が発達して人々の生活は楽しくなり、通話料金も安くなりました。
第二に、政府支出削減策もデフレ促進策ではありません。
三橋らが批判する小泉政権は政府支出を減らしましたが、上のグラフを見ればわかるとおり、インフレ率は上がっています。三橋の主張は単に事実として間違っています。
参考として、歳出の推移。

また、現在のアメリカも歳出削減と増税を実行しており、今後8〜9年それが継続されることになっており、人々の「予想」も当然それに沿ったものになっていますが、経済は回復しています。緊縮財政がGDP成長率に何の影響も与えていないことは何ヶ月か前に話題になりました。
このように、三橋の意見は常に、
1.事実に反している 
2.「安全」と「経済対策」のような、種類の違うものをゴチャ混ぜにする
3.ナショナリズムを悪用する 
という特徴が見られ、言説の質の低さが目につきます。