購買力を上げるには構造改革せよ

みんな大嫌い構造改革ですが、その実、根拠はハッキリしてませんな。
駄目だ駄目だという声が多いから、「ダメだよね。そんなの常識。」てな感じで頷き合われているだけで、構造改革がダメな証拠は全然出ておりません。
国土強靭派が最近使い始めたリフレ否定のネタは「実質賃金」ですが、こういう話を聞いて安直に乗っかる前に意味を調べるようにしましょう。
それが構造改革「批判」からの教訓です。
実質賃金とは、ある賃金でどれほどの物品を購入できるかを示す概念です。
物価が上昇して賃金が変わらなければ、確かに物品を買う力は落ちます。
しかし、当然のことながら国土強靭派は都合の悪い部分はごまかして言い立てていますから、その辺を検討していきましょう。

ゴマカシその1:実質賃金のだけを言い立てる

この頃は金融緩和のおかげで経済活動が活発になってインフレ率があがってきていますが、賃金は毎月上がるわけではないので当然のことながら実質賃金は当面低下するでしょう。1%かそこら。
1%だけ物品を買う力が衰えることを指して「貧しくなる」と騒ぐのは神経症だと思うのですが、年に一度の昇給を境に、実質賃金が上昇する人もいるでしょう。それは個々の企業の状況によります。
そして何より失業していた人が職を得れば、その人の実質賃金は跳ね上がります。アベノミクス開始によって、新たに職を得た人が100万人ほどいるわけですから、豊かになった人が東京ドーム20杯分くらい現れたことになります。
黒田岩田日銀の金融政策により、まだまだ不十分ながらもGDP成長率がプラスになっています。ということはつまり、私たちの賃金の原資が増えているということです。
そこで考えなくてはならないのは、私たち勤労者全体が受け取る賃金の総なのです。
一人あたりの率で見れば1%下がっているかもしれない。しかし、経済成長し、失業者が減っているということは、賃金全体の額は増えている、格差が縮まっている、社会は豊かになっている、ということです。
国土強靭派は、「実質賃金の率が下がるとデフレの悪循環が戻ってくる」などと主張していますが、彼らは率と額の区別がついていない、或いは意図的につけていないわけであります。
率と額を都合の良いように使い分けるという操作は、公共事業の入札不調の議論の中でも使っていましたね。

構造改革する⇒生産効率が上がる⇒価格が下がる⇒購買力が上がる

実質賃金を上げろ、という主張は言い換えると「購買力を上げろ」ということになります。
人々の生活を援護するために購買力を上げるとすれば、生活必需品の価格を下げるのが良かろうと思います。
物価はあくまでも金融政策の守備範囲ですが、個々の物品の価格であれば、構造改革によって実現可能であります。
コメ農業を構造改革した場合を考えてみましょう。
減反政策を廃止して収穫を増やすと、コメ価格は4割下がると言われます。
高米価是正によるコメ大輸出戦略
で、今の日本人は一人当たり一ヶ月につき、5キロのコメを消費するようです。
年間1人当たりの米の消費量(しょうひりょう)を教えて下さい。:農林水産省
で、コメの価格はいろいろありますが、高すぎず安すぎず、5キロ3000円のコシヒカリを食べているとしましょう。
コメ農業が構造改革されると、5キロのコシヒカリが1800円になります。
1200円のお得。
20代後半の平均月収は28万円くらいだそう。(大企業のエリートサラリーマンを含めて。平均でなく最頻値でみればもっともっと低いはず。)
計算してみると、なんとなんと、コメが構造改革されるだけで購買力が0.4%以上もアップしてしまいます。
(外食産業におけるコメ購入コストも低下しますから、それは牛丼その他の価格の低下として表れるか企業利益の増加として表れますから、前者なら消費者、後者なら従業員の豊かさがアップします。)
コメの生産効率を上げて価格を下げる利得はずっと続くわけではありませんが、人々の所得にしめるコメの価格は今よりも格段に下がった状態になりますから、他のモノゴトが買えるようになるという意味で私たちは豊かになります。
だったらみんな、構造改革万歳じゃん!?

ゴマカシその2:購買力をげる構造改革になぜか反対

…しかし、しかしですね、どういうわけか国土強靭派は構造改革大反対なのですよ、雁首揃えて。
構造改革すると物価が下がる(彼らは価格と間違えている)。物価が下がるとデフレになる(デフレは貨幣現象なので、なりっこないのですが…)」とか言って。
実におかしいですね。
国土強靭派は、「実質賃金を上げろ」と言っている。それはつまり、購買力を上げろという意味です。
それなのに、購買力を上昇させる構造改革には反対しているのですよね。
何故なのでしょう。
代わりに彼らが唱道するのは公共事業。
「実質賃金を上げて国民を豊かにせよ」と主張するわりに提案してくるのは、土建という一部業界に国民全体から集めたカネをつぎ込む政策。
土建業界は過熱してしまい、労働者の賃金も高騰していますから、確かに土建労働者の実質賃金は上昇しています。
つまり、日本国民一般をさしおいて土建労働者だけに得をさせた、政府の力を利用して差別的待遇を実現させたのは国土強靭派だったというわけです。
このような行為のどこが経世済民なのでしょうか。
彼らが国土強靭化賛成、構造改革反対、TPP反対なのは、国民全体の利益を考えているように見せながら実はそうではなく、公共事業や農業や社会保障における一部業界の利益を守るためではないのか、そういった結論ありきだから話の内容がしょっちゅう矛盾していたり、捏造を繰り返したりしているのではないかと思われてならないのです。