日本の公共投資は多い【藤井聡】

ジー聡は以前、「公共事業こそが実質GDPを増加させる」と言っていましたが、2013年の実績を見ればわかるとおり、公共事業をだらだら増やしても実質GDP成長率は低下し続けました。
アベノミクス第二の矢の失敗とは、良心的経済学者たちが「再分配せよ」と主張していたのを無視して公共事業にカネを突っ込んだことであります。
まともな経済学者の言うことを聞いて給付金を出していれば、今までお金がなくて買いたいモノゴトが買えなかった人々はこぞって消費し、実質GDPはもっと伸びていたでしょう。
しかし実際には、「今すぐカネをよこせ」と鼻息荒く迫る土建トライアングルの勢いにおされ、もともと復興需要があり、東京五輪も獲得できるかもしれない情勢であったのにも関わらず、不要不急の公共事業にカネを出す決定をしてしまい、供給不足で入札不調、各地で人手が不足、資材価格も急騰、復興住宅などの重要な工事が滞る事態となっています。
これは失政と言ってよいでしょう。
このようにフジー聡の主張は現実によって冷徹に否定されているわけですが、藤井は何の申し開きもせず、「財政政策vs金融政策」という理屈上の(現実ではなく)議論に人々の目をそらし、責任のがれに汲々としています。
ただ、藤井の議論は学者とは思えないほど雑で、自分に都合の悪いことにはだんまりを決め込むという悪癖があるので、事細かに突っ込みを入れておかないと社会に悪影響を及ぼします。

本の公共事業は減ったが、他国と比較すると多い

ジーこのプレゼン資料の16ページで、「日本の公共事業だけが減った」と大騒ぎしていますが、見た瞬間に私は「ああ、どうせ都合の悪い資料は出してないんだろ」と考えて即座に調べました。
すると、ごく簡単に藤井には都合の悪い資料が見つかりました。
藤井が出したのがこれ。国交省が出した資料です。

これだけ見てしまうと確かに、「日本だけこんなに減らしたら不景気になって当たり前だ!」と思うでしょう。
しかし、この資料のすぐ隣には次のグラフがあったのです。

減らしたあとでも他の先進国のより多いのですよ。
といいいますか、それ以前がぶっちぎりで高い、高すぎただけです。
もっと言えば、他の先進国に比べて、対GDP比で滅茶苦茶に高い公共事業費を費やしてもデフレから脱却できなかった事実が、このグラフからは読み取れるわけです。

田副総裁へのイチャモン

リフレ派の何人かの先生方をフジーは名指しで論難していますが、在野の方々はご自分で反論できるでしょうから良いとしても、岩田副総裁は立場上フジーなんぞと論争できませんから、周りの人々が代わりに反論しておく必要があると思います。
藤井はこのメルマガの中で、「『リフレが日本経済を復活させる』という本のなかで、『マネタリーベースが拡大すると予想インフレ率が上がる』と岩田は主張しているが、期間が2009〜2012年と短いので信頼性が低い上に、自分は反証となるデータを示すことが出来る」と書いています。
で、まずはそのデータを見ようと思ったのですが、なぜかリンク切れになっているので、早く復旧させてほしいと思います。
データがなぜかリンク切れになっている以上、そこの検証はできないので、「岩田の出しているデータが2009〜2012年と短いので信頼性が低い」という部分を検証しました。
まず前提として、日本の予想インフレ率がわかるようになったのは2004年からだということをおさえます。
次に、岩田副総裁が意図的に短い期間を選定して読者を欺こうとしたのかどうかを調べます。
過去の著作を見返したところ、「デフレと超円高」の137ページから141ページにかけて、2004〜2006年にかけての、マネタリーベースと予想インフレ率の関係について説明がなされています。ついでに言うと、アメリカのも説明されています。*1つまり、予想インフレ率についてデータが入手できる最初期からの説明を試みています。
また、「ユーロ危機と超円高恐慌」の174ページからは、2004〜2011年における、マネタリーベースと予想インフレ率の関係が説明されています。
一般人でも本屋さんでいつでも入手できる何冊かの一般書において、岩田副総裁は2004〜2012年まで、つまり、日本の予想インフレ率についてデータが得られる全期間の「マネタリーベースと予想インフレ率の関係」を説明しているということが明らかになりました。
ジー聡は学者のくせに、まさか『リフレが日本経済を復活させる』という本一冊だけ読んで岩田副総裁を批判したのでしょうか?
ジー聡が無礼にも、根拠の薄い論難を岩田副総裁に浴びせかけたのは、単にフジーの読書量が足りなかったからだ、ということが分かったのであります。

*1:岩田副総裁はこの説明の中で、「マネタリーベース統計発表の遅れを考慮して、一年前のマネタリーベース増加率が今年のインフレ予想に影響すると仮定した」と明記しています。