いっそうの金融緩和を行うべし(期待薄ですが…)

デフレと超円高 (講談社現代新書)

デフレと超円高 (講談社現代新書)

消費増税のショックを打ち消すために、5月中にも国債買い入れ額を倍増するべきだ、と浜田参与が発言しています。

浜田教授:日銀の長期国債買い入れ倍増は「可能」−追加緩和5月にも
 3月14日(ブルームバーグ):安倍首相のブレーンである浜田宏一・米エール大名誉教授は、日本銀行は消費税率引き上げの影響が深刻だと判断すれば、5月中にも追加緩和を実施すべきだと述べた。具体的な手段としては、長期国債の買い入れペースを倍増し、新規に発行された長期国債を全て買い入れることも可能との見方を示した。

諸手を上げて大賛成の提案ですが、実現すると空前の規模での金融緩和になりますし、そのくらいやらなければならない状態にあるのが日本経済だという見立てです。
次のくだりも重要。

一方、日銀が2%の物価上昇を目指していることについては「物価をどうして2%にしなければいけないのか、全く分からない。1.5%だっていい。2%までなら何の問題もないが、4、5%になれば人々への大衆課税になる」と指摘。「雇用と生産、GDPが回復すればいいわけなので、2%にならないからアベノミクスは目的を達成できなかったと言われる筋合いはない」と語った。

浜田参与は元来このような意見でしたから、驚くにはあたりません。
私はインフレ目標政策を支持していますが、浜田教授の意見にも勿論同感です。
というのは、多くの人が誤解していますが、インフレ目標政策もまた、本質的には「雇用と生産、GDPを回復」させるのが目的なのであって、インフレ率そのものが本質的目標ではありません。
経済が活性化した結果インフレ率が上がるのであって、インフレ率が上がるから経済が良くなるわけではありません。
経済活動とインフレ率をバラバラに切り離して考えている人が多いのですが、それは非常に奇妙な発想であって、経済活動が低迷しているのにどうしてインフレ率だけ上げることができるのでしょう。
雇用と生産、GDPを回復させるのが本質的目標であるのにインフレ目標政策に賛成する理由は、それが「予想」と大きく関わるからです。
また、岩田副総裁が提唱してきた「伸縮的インフレ目標」は名目GDP成長率を4〜5%に保つことを念頭において実施されるべきものなのですから、浜田参与が指摘している点も包摂した考え方です。
ただ、現在の異次元緩和は岩田副総裁の伸縮的インフレ目標政策とは異なりますが…
そして、伸縮的インフレ目標政策は2%という目標値を決めても、それにきっかり合わせなければならない政策ではありませんから、その点でも浜田参与の主張と齟齬が存在するわけでもありません。
これらのことは今はじめて言われるようになったわけではなく、岩田副総裁の過去の著作、たとえば「デフレと超円高」にも登場します。