2014年のしきたり破り その1


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明けましておめでとうございます。
「上手くいき始めている日本」という雰囲気で迎える正月は実に久しぶりであります。

2014年の変革は

日本人のように常に忖度しあっている人々がくらす社会では、ある種「空気がよめない」人が「しきたり破り」をしなければ変革ができません。
何十年も続いていて、続いているからという理由だけで疑問視されない風習があちこちにこびり付いていて、日本の動きを強く制約しています。
2014年には、意志をもって取り組まなければならない変革と、好むと好まざるとにかかわらず対処しなければならない変革、これは結果がどうでるか楽しみな面もありますが、存在しています。

増税と追加緩和

4月に税率が上がるまでの間はつかの間の高揚感にひたることができるので、それなりに楽しみたいと思いますが、デフレ脱却に関心を寄せる立場からは消費増税がどれほどの悪影響を齎すかが焦点になっています。

1997年の橋本増税は最悪

「福祉を充実させる」というお題目で実施されたこの時の増税は景気をまさしく腰折れさせ、それ以降の自殺者を年当たり8000人〜1万人増加させたという大惨事になりました。
戊辰戦争の戦死者が8000人ですから、橋本増税後の日本は毎年内戦をやっているのと同じくらいの犠牲者を出し続けたということになります。

参考:近年のアメリカ事情

アメリカが昨年から実施したのは、歳出削減や増税を合わせて「10年間で367兆円の緊縮財政」のよう。日本では増税分などは報道されないので総体が分かりにくいです。
米国の歳出強制削減のまとめ - Market Hack
単純に割り算すると、一年あたり37兆円の緊縮。日本はアメリカの3分の1くらいの経済規模なので、これまた単純計算すると日本では12兆円くらいの緊縮にあたります。
橋本増税の緊縮は消費税だけで考えると5兆円*1で、そこから普通に考えると大変なことになりそうですが、実際にはならなかったというのがポイント。

これはアメリカの実質GDP成長のグラフですが、ほとんど影響が見られませんでした。
この点についてはマーケットマネタリストの予測どおりで、「緊縮財政を行っても、金融緩和すれば悪影響は相殺できる」という主張が今のところ正しいように思えます。マーケットマネタリストが「日本が消費増税しても、追加緩和すれば大丈夫だ」と主張する理由がここにあります。

税の種類による影響の差は?

そうはいっても、たやすく安心できないところもあります。
増税の悪影響についての専門家の意見も分かれているように見えます。
日本では税の種類に関わらず、影響は同じであるという前提で語られることが多いです。消費増税する代わりに法人減税する、といった話。
しかし論者によっては、「所得増税より消費増税の方が景気への悪影響は強い」という説を述べる人もいます。この説が正しい場合、「アメリカは金融緩和で増税などの緊縮を乗り切ったのだから、日本も同じように出来る」とは言えなくなります。
アメリカの増税は消費税ではないからです。

金融政策vs消費増税

このような事情があるので、2014年日本の消費増税・金融緩和をめぐる動きは、経済学的に大きな意味を持つ「実験」に、図らずもなってしまいました。
この実験にはいくつかの展開が考えられ、不謹慎ではありますが大変興味深いことになっています。
黒田総裁は立場上、消費増税の悪影響を認めるわけにはいかないので、「悪影響」が顕在化するまでは動けないでしょう。*2そうすると、「悪影響」を何とするのかが問題です。
予想インフレ率や株価を見て動くのはやや軽率という感じになるのでしょうから、家計消費やGDP成長率などから判断するとなると、消費増税から2ヶ月〜6ヶ月くらい遅れて追加緩和の判断を行うことになります。もし半年放置したらかなりマズいですね。安倍政権は半年間マスコミから集中砲火を浴びますし、特定秘密保護法の施行も重なるので叩かれ方は最悪になります。
ただ、そのまま異次元緩和でも悪影響が本当にでない可能性もなくはないです。
アメリカの金融緩和は毎月8.5兆円のペースで行われ、年間37兆円の緊縮財政を乗り切りました。
アメリカの3分の1の経済規模の日本では毎月6兆円の金融緩和をして、消費増税8兆円の緊縮を迎え撃とうとしています。
税の種類に関わらず景気への悪影響が同じであるなら、そのまま異次元緩和でも乗りきれてしまう可能性は無きにしもあらず。但し日本はデフレですから、そこも判断に迷う要素です。
しかしまあ、個人的には追加緩和をしてほしいと思いますし、できるなら4月以前から、或いは4月から、例えば中国やユーロ圏が危ないとか何とか適当な理由をつけて実施してほしいです。
緩和額を増やすのもいいですが、日銀法改正で日銀に雇用対策を義務付けることにより、インフレ予想を強化してもいいと思います。
この実験では、金融政策と財政政策の関係、消費税とその他の税の性質という、経済政策を考えるときの重要な点についての事例が観察できてしまいます。
増税を金融緩和で乗りきれることはアメリカで確かめられましたが、消費税も金融政策で相殺できてしまうことがもし確認されれば、財務省・政治家・国民が三方一両「得」する朗報となります。国民は、財政政策の成り行きに一喜一憂する必要がなくなるでしょう。ただ、国民の関心が薄れるので一層のモラルハザードが発生して財政にまつわる腐敗は酷くなるでしょうが…。そして、景気対策は金融政策でやれば良いということが証明されます。
消費増税がそのまま異次元緩和では乗り切れないことが分かれば、「消費税は他の税よりも景気に与える影響が強い」ということが確かめられます。追加緩和によって乗り切れたとしても、消費税で増税することは不適切であるとの認識が広がり、財政政策の議論に影響が出るでしょう。


というわけで、2014年のしきたり破り第一弾は、「10万人を殺した虐殺兵器・消費税vs智慧の光・リフレーション政策」の結果によって、これまで何十年も語られてきた「経済の常識」が転換する様子を観察するものになります。

*1:景気対策もしてはいたので、実際はこれ未満の緊縮

*2:しかし報道によると、「春闘の結果を見て考える」と黒田総裁が発言したそうなので、4月前に対策がとられることもあるのでしょうか?