年金積立金はどのくらいマズいことになっているか

年金積立金の財源として消費増税が組み込まれ、再増税も組み込まれ、再々増税も組み込まれ…という負の連鎖が今後の数十年に反復されることになるだろうと私は思うのですが、その根拠は厚労省や政治家が公表しようとしない、年金積立金の状態の悪さにあります。
今回の消費増税の一部を積立金の財源として利用したことで、積立金の枯渇は20年後まで延ばせるようになったわけですが、消費増税ができなかった場合には、国民年金積立金は2023年、厚生年金積立金は2024年に無くなるはずでした。わずか10年後。
2004年の「100年安心プラン」の想定と比べると、2012年の積立金はマイナス50兆円、2009年の財政検証による想定と比べるとマイナス30兆円です。
この状況を取り繕い続けるために、しかも富裕層優遇は続けるために消費増税は繰り返されていくものと思われます。
低所得層に不利な逆進性をもつ消費税を財源として選ぶということは、現在の社会保障システムを続ける限り、どこかで立ちいかなくなると政治家や官僚は予測しており、その場合でも自分たち富裕層は財産を一層ためておくことができるようにしているのだと思います。

年金改革ができない理由

少子高齢社会で賦課方式をとっていると、いま起こっているような社会保障財源の不足や、不公平な負担割合が不可避なものであり続けるのですが、その改革ができない理由は何でしょう?
鈴木亘教授は次の要素を挙げています。

  1. 政治家や官僚は、これまでのバラマキの責任を認めなくてはならなくなる。
  2. 公平な財源として、社会保障むけの所得税相続税を新設しなくてはならなくなる。
  3. 年金を積立方式に変えれば、国民にとって「負担=給付」の公平なシステムになるが、それは有権者からの受けが悪い。これまでのように、「負担<給付」を続けて、票を稼ぎたい。
  4. 積立方式に変えると、年金保険料の流用ができなくなる。グリーンピアという保養施設=リゾートホテルは、官僚の天下り先である公益法人が関わり、年金保険料を流用して建設して大失敗したが、そのような裁量を保持したいので、不透明な賦課方式を維持したい。
  5. 年金特別会計に関わる独立行政法人公益法人天下り先である。財政が透明な積立方式にすると、存続できない可能性がある。
  6. 金保険料を運用して失敗しているGPIFは天下り法人だが、現在の賦課方式は運用を失敗しても、年金給付と関係ないシステムになっている。失敗が一般国民からは問題視されない仕組み。積立方式は運用成績が年金給付に反映するため、天下り官僚の責任が追及される可能性がある。


これらの事情があるため、政治家や官僚は何が何でも消費増税によって、先行きの破綻が明らかな賦課方式を取り繕いつつ継続しようとしているのです。
暗澹たる思いですね。
「これから払う」と約束した年金のために、約750兆円を調達しなければならないのですが、それを不公平極まりない賦課方式でやろうとしているのです。
これからの現役世代は、年金債務だけで750兆円をすでに背負っています。
現役世代は少子化のために先細りになっていくので、先の世代ほど負担が増えます。
1965年生まれ以降の人々は、「負担>給付」になりますから、750兆円の一部を負担して引退したときには、支払いより少ない年金しか受け取れないことが、計算上すでに明らかになっています。
例えば、1990年生まれで現在23歳の若者は、支払った保険料より受け取る年金が2100万円少なくなります。
下の世代になればなるほど、この数字は悪化していきます。
しかし、恐ろしいことに社会保障は年金だけではないのです。