消費増税を強行した理由(陰謀論以外)
消費増税を2014年4月から行うという決定は、とても不審なものでした。
消費増税を1年先延ばしにしたところで、
という事情があるうえ、経済の調子は良くなるのですから、急いで増税する理由が思い浮かびません。
「外国勢力の差金ではないか?」「官僚は利権のために不況を望んでいるのではないか?」といった『陰謀論』が語られるのも無理はありません。
政策の決定には多くの人々が関わるので、これら『陰謀論』もおそらくは一部正しいと思うのですが、それでもどこかモヤモヤしたものが残ります。
そんな中、「消費税は社会保障の安定財源たり得ない」というタイトルの、鈴木亘教授のエントリを読んだことがきっかけとなり、「消費増税、しかも日銀も動かないようだし、目先を変えてミクロな知識*1の方も深めるか…」と考えて、久しぶりに鈴木教授の著作を拝読しました。
- 作者: 鈴木亘
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
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消費増税は揺るぎなく決定されていたのではないか?
「年金問題は解決できる!」P59までの内容まとめ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/gaiyou.pdf
最後の項目を見るとわかりますが、財政検証というのは「年金は大丈夫だ」という辻褄合わせを発表するものなのです。
厚労省の想定が非現実的に甘いので、実際の積立金残高は想定を30兆円も下回ることになっています。
さて、財政検証は5年に一度。
前回の財政検証は2009年。
次に辻褄合わせをやらなくてはならないのは何年でしょうか?
積立金はあと20年で枯渇する
消費増税分1%を組み込んでも、今のペースでいくと20年後に積立金はなくなります。焼け石に水。
消費増税しても年金積立金は保たないのですから、鈴木教授は、「年金を人質に消費増税をやむを得ないものとしたのだろう」と推測されています。
しかし、2013年5月10日の国会本会議で安倍首相は、厚労省の見解そのままを述べてしまっています。
二〇四二年以降の年金制度についてお尋ねがありました。
年金制度については、今後の人口や社会経済状況について一定の前提を置いた上で、おおむね百年間で収支が均衡するように制度の設計を行っており、その上で、経済社会の変化に対応するため、定期的に財政検証を行うことで、長期的に持続可能な運営を担保しています。
今後、御指摘のとおり、高齢者人口の増加と少子高齢化の進行が見込まれますが、社会保障・税一体改革の過程では、これまでの累次の改革により年金制度が長期的に運営できる仕組みとなっているとの認識を三党で共有しております。そのことは、当時の国会審議の中で、野田総理、岡田副総理からも答弁をしていただいております。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm
実はこの答弁を私はネットの動画ニュースで見て、「なんて事を言うのだ」と思った記憶があります。
以下の動画の、1時間30秒あたりが該当部分です。
ご覧になると分かる通り、混乱して会が中断したあと、安倍首相は慌てた感じで上記の答弁を行っています。
この様子から見ると、官僚と急いで答弁をすりあわせた結果、厚労省の詭弁そのままの言質をうっかり与えてしまったのではないかと思うのですね。
つまり、2009年から5年目、麻生とのしがらみ、5月10日に与えた言質、といったものが相まって、かなり前から今回の消費増税を決めていたのではないかという推測が可能になるのです。
もちろん、真相はわかりません。
しかし、この推測が正しいとするなら、日本のために真摯に訴えを続けた人たちはいい面の皮だったな、と思わざるを得ません。