デフレ脱却のために消費税はむしろ減税せよ

消費増税に賛成する「元リフレ派」山本幸三議員のことを、「消費増税の悪影響を純粋に金融政策で相殺しようとは、マネタリストの面目躍如ですね」などという意見があるそうですが、山本議員の言い分は単なる詭弁であって、マネタリズム云々は関係ないと思います。
山本議員は、財政政策と金融政策を峻別するという、とてもおかしな主張をしていました。
「消費増税しても、デフレは貨幣的現象なのだから金融政策で脱却できる」という屁理屈です。
そりゃまぁ、強烈に金融緩和したら消費増税の悪影響を相殺出来る可能性はあります。
マーケットマネタリストならずとも、浜田参与もそれに近いことを言っています。
しかし、消費増税の何が悪いかというと、需要(=名目支出=使われるおカネの額)を減らすことによってデフレを悪化させる点にあります。
名目支出に影響を与えるという点において、財政政策も金融政策も変わらない、というのはサムナー教授の指摘ですが、その通りだと思います。
財政政策で名目支出を減らしておきながら、金融政策で名目支出を増やそうなどというのは、以前も書きましたが、「1-1+1+1=2」というバカげた計算をするのと同じであります。
そんな不自然な提案をする動機は何なのでしょう?
その非合理性に今回の消費増税の本質があるように思われます。

消費減税せよ

ちかごろ良く参考にしていたマーケットマネタリストたちが、自分たちの理論を証明する機会だとばかりに、日本の消費増税に賛成する言説を言い始めたので、その政治的センスのなさに失望して読まなくなっているわけですが、原点に帰る意味で日本リフレ派の著作を再度読み始めています。

日本再生に「痛み」はいらない

日本再生に「痛み」はいらない

この本には今般の消費増税論議に役立つ知恵がつまっていまして、岩田副総裁と八田達夫教授の視野の広さ、理論だけでなく現実の事情に通じたプラグマティックな提案の数々に改めて感銘を受けます。
マーケットマネタリストは理論に溺れるだけでなく、こまごまとした個別の事情も調べてから政策提言するべきだと思います。彼らは政策提言者としては未熟に思えます。
「日本再生に痛みはいらない」のなかで八田達夫教授は、「消費税は減税し、所得税の累進を強化せよ」という提言をされています。
消費税を減らすと名目支出を増加させる効果がある一方、所得税を増やしても景気への影響が薄い、という点がひとつ、景気が回復した場合に累進強化されていると自然増収の度合いが高まるので財政再建に役立つ、ということがふたつ目に挙げられています。
また、消費増税して所得減税するという、この十年来の動きは「高所得者優遇である」とも分析されています。
「日本再生に痛みはいらない」は、一般の人でも政策について考え、評価するときに参考にしやすい書物ですので、おススメしておきたいと思います。