黒田日銀総裁、またも株価を急落させる

5月23日の株価暴落の原因は黒田日銀総裁の不適切な発言による疑いが濃厚ですが、本日行われた「最近の金融経済情勢と金融政策運営」という講演によって又も株価を大きく損ないました。
468円。
もちろん、さらなる円高をも招いています。
これは、市場が黒田総裁の考えに否定的であることを示しています。
黒田総裁の経済観にそった政策が行われた場合、日本の成長は損なわれるとみているのです。
黒田総裁は「消費税の2段階の引き上げで、日本の経済成長が大きく損なわれることにはならない」と述べたそうですが、金融政策担当者が財政政策に口出しをするのは分を越えた行為と言えます。
また、「4月に巨額の国債買入れを伴う異次元緩和を打ち出した際、政府が消費増税など財政再建を進めるのを前提としていた」そうですが、いやしくも公職にある人間が、このような後出しジャンケンをするべきではありません。
黒田日銀による異次元緩和は、白川以前の日銀に比べれば天と地ほどの差をつけて良い政策を行なっていますが、消費増税の悪影響を相殺する目論見どころか、2%インフレ目標の達成すら微妙な程度です。
黒田総裁は日銀決定会合ごとに、「自分の本籍は財務省だ」と受け取られる発言もしてきました。
今日の講演は、そのアイデンティティを明瞭にしたものといえます。
そして、名目金利にまつわる怪しい議論を展開することによって、その度に円高を招くという失策を積み重ねて来ました。
下の表を御覧ください。黒田総裁が発言するたびに円高になっています。
黒田総裁の思想が市場から信頼されていない証拠です。
5月下旬以降、株価も為替レートも「ほどほど」ですが、これは黒田総裁が「270兆円のマネタリーベースは2%インフレ目標達成に必要十分」と主張していることと矛盾します。
異次元緩和では毎月、正味5兆円のマネタリーベースが増えるようにカネを出していますが、5月下旬以降の市場はそれに反応しなくなっているからです。
これは黒田総裁の経済観、おそらく名目金利に対する思想ですが、それに対して否定的な評価がくだされているのだと思われます。
つまり、実際のカネをどんどん出しているのに「予想」が黒田発言によって傷つけられているために、リフレーション効果がでなくなっているのです。
アベノミクス開始時に、実際のカネを1円も出していないのにも関わらず、非常な勢いで株価と為替レートが好転していったことと好対照をなしています。
5月下旬以降の黒田発言をうけた市場は、「クロダは間違った経済思想を持っている。他の指標がどんなに良くても、名目金利ひとつが上昇すれば、それをおさえることを最優先する。しかし、インフレ率を改善し、名目GDPが改善する見通しが出れば名目金利は上昇する。それをおさえるには金融緩和を止めなくてはならない。つまり、場合によってクロダはリフレーション政策を放擲する可能性がある。」と解釈しているはずです。
そうでなければ、4月から5月中旬までと金融緩和ペースが変わっていない現在に、資産市場の停滞が発生するはずがないのです。
そして、停滞がはじまったのは5月23日の株価暴落であり、その前日には日銀決定会合があったのです。

日付 ドル円 黒田発言
5/20 102.26
5/21 102.46 日銀決定会合
5/22 103.15 日銀決定会合
5/23 102.01
5/24 101.27
5/27 100.93
5/28 102.36
5/29 101.13
5/30 100.72
5/31 100.46
6/3 99.51
6/4 100
6/5 99.06
6/6 96.94
6/7 97.53
6/10 98.76 日銀決定会合
6/11 96.01 日銀決定会合
6/12 96
6/13 95.36
6/14 94.07
6/17 94.49
6/18 95.32
6/19 96.46
6/20 97.27
6/21 97.89
6/24 97.72
6/25 97.8
6/26 97.72
6/27 98.34
6/28 99.12
7/1 99.65
7/2 100.62
7/3 99.9
7/4 100.03
7/5 101.18
7/8 100.95
7/9 101.14
7/10 99.64 日銀決定会合
7/11 98.94 日銀決定会合
7/12 99.21
7/15 99.85
7/16 99.09
7/17 99.57
7/18 100.4
7/19 100.64
7/22 99.64
7/23 99.4
7/24 100.24
7/25 99.28
7/26 98.25
7/29 97.96 消費増税肯定