はたして長期金利は下げるべきものか?

この点、アベノミクスへの攻撃材料としては主要なものになってきています。
金利の問題は玄人、実は学者にとっても思い違いを発生させやすい分野であるようで、一般国民にとっては当然のことながら分かりにくい分野なので、野党・マスコミ・デフレ派にとってはデマ拡散の格好の題材となっています。
私たちが金利について持っている考えは、大抵が間違った「常識」であるようで、アベノミクスを中傷によって頓挫させないためにも、誤った考えを人々にアンラーニングしてもらえるような啓蒙活動が必要になってきます。

長期金利に強力に低下圧力加える、変動率の高まり放置せず=日銀総裁
2013年 05月 30日 12:14
[東京 30日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は30日午前の参院財政金融委員会で、上昇基調にある長期金利の動向について、「量的・質的金融緩和」による巨額の国債買い入れを通じて「長期金利に強力に低下圧力を加えていく」と語った。長期金利の安定的な形成が重要とし、「金利ボラティリティ(変動率)を放置せず、できる限り小さくして金融政策の効果が強力に発揮されるようにしていく」と強調した。金子洋一委員(民主)の質問に答えた。

長期金利の変動をおさえる方策を日銀がとっていくのは良いことなのでしょうが、金利の変動のどこが悪いのか、ということについては読んだ記憶がありません。一般書レベルだとそこまで扱っていないのだろうと思います。
また、「長期金利に低下圧力を加える」というのも方針としては実に良いことで、この方針を通じて金融緩和していく方向性が再び明らかにされました。この情報が海外の投資家たちに正しく伝わってほしいものであります。
ただ、表現の仕方、マスコミの質問への対応の仕方には少し注意が必要で、これは日銀だけでなく政治家でも同じですが、「長期金利の上昇が日本にとって悪い」という前提で話してしまうと、それは間違った常識を強化してしまいます。
リフレーションの専門家はもちろん、「景気を良くして長期金利が上がる状態を目指していく」と以前から主張していましたし、今もそのつもりで活動しているわけですが、普通の人々にはその辺のことはとてもわかりにくいのです。
リフレの敵は、一般の人々が抱く誤った思い込みを利用してプロパガンダしていますから、それに対抗するには、人々の誤った前提を修正することが大切になります。

日銀は大胆な金融緩和策の推進で、期待インフレ率を上昇させて実質金利を引き下げることも狙っている。黒田総裁は、物価連動国債から算出されるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)や各種アンケート調査など「このところ予想物価上昇率の上昇を示唆する指標がたくさん出てきている」と指摘。

物価連動国債は、今は発行停止しているのでしたっけ?
来年から再発行するというニュースもありましたが、今年中に再開してほしいと思います。
マーケットマネタリストからは、「名目GDP連動国債」の発行が提案されていたりもしますね。
これを発行すると、インフレ率だけでなく実際の産出が将来どうなるか、という点についても市場が勝手に予想してくれますから便利だと思います。
実際の産出はどうなっているのだっけ、とか、どうなるのだろう、ということを各種のパラメータで見ていくのは結構手間がかかりますし、見たところでどう予想すればいいのかが、一般のリフレ支持者には荷が重いことであります。
その点で、名目GDP連動国債があれば、産出についての調査や予想は投資を商売にしている人々が自発的にやって、名目GDP連動国債の価格にまとめて反映させてくれますから、物価連動国債との差を見れば産出についての市場の予想を簡単に知ることができますね。
一般のリフレ支持者が行う世論形成の助けになるだろうという気がします。
日本の債務問題を考えるとき、長期金利と名目GDP成長率を比較して、後者が上回るようになっていけばよいわけです。名目GDPの上昇によって税収が増えます。
ただ、税収の上昇の方が遅れる時期があるだろうと言われていますから、その間の野党・マスコミ・デフレ派の攻撃をかわし続けるという難題が待ち構えています。
経済の専門家には理論や実証に基づいた見通しがありますから、数年かけて名目GDP成長率の方が上回っていくという筋道くらい当たり前だろうと考えますが、一般国民にとっては数年は長い期間です。
その間に、野党・マスコミ・デフレ派のプロパガンダにのせられて、アベノミクスを選挙を通じて頓挫させてしまう危険性はかなり高いと言えましょう。
国民によるそのような「自殺」を行わせないための説得材料として、名目GDP連動国債は使えるのではないでしょうか。
単にインフレ率があがるだけでなく、実際の産出も上昇して景気がよくなっていくことを映しだして長期金利が上がっているのです…という説得ですね。
いろいろなパラメータを出すよりも分かりやすく、印象が強いと思います。
また、金融政策以外で、日本の産出を改善していく必要性を探る手がかりとしても使えるような気がします。