アベノミクスは成功するか?

ムナー教授。

  1. 日銀は名目GDPを押し上げることができるか?⇒もちろん出来る
  2. 日銀は2%のインフレ目標を達成できるか?⇒多分、出来ない
  3. インフレ率を上げると実体経済は良くなるか?⇒多分、良くなる
  4. 2%のインフレになったら、日本は好景気になるか?⇒多分、ならない
  • 円の減価が出来たのだから、名目GDPの押しあげはできるし、もう出来た
  • 日銀の審議委員の中に、2%インフレ目標に懐疑的な人間がいるのだから、目標達成はできないよ
  • 最近の円高や株価急落は、日銀内の意見対立に原因があると思う
  • インフレ率を上げることができたら、実質GDPも伸びるとは思うが、そんなに凄いことになるとは思わない。日本の問題は供給面にあるから、構造改革が必要だと思う
  • 今みたいにまあまあ良い時期には、悲観的なことを言う奴の方が賢く見える。大半の人がネガティブな見方をするのは、それが無難だから
  • 名目GDPの押し上げに成功したことについて、それが大したことないとは言っていない。日本は20年もの間、2%のインフレ目標すら設定できず、効果のない財政政策ばかりやって膨大なカネをムダにしながら、名目GDPの落ち込みを止められなかったわけだし

興味深い意見です。
日本の場合、名目GDPが伸びるだけでも大助かりなのでアベノミクスは大いに意味があるということになります。
金融政策の効果に懐疑的な人間が日銀審議委員になってしまうというのは日本が抱えてきた深刻な問題です。
日銀改革の必要性はまだまだあり、日銀法改正や日銀の組織・リクルートに関する改革が必要でしょう。
日銀の問題と、日本が今まで金融政策でなく財政政策ばかりやってダメになってきた理由は、社会の隅々にまで食い込んだ官僚と天下りのネットワークとその権力、そのしぶとさ、厄介さなのですが、おそらくサムナー教授はそこまでは把握されていないと思います。政治も企業もマスコミも学校も、とにかく全部まるごと雁字搦めにされて目隠しをされている、SFみたいな官僚支配国家が日本なのですが、その辺は西洋の人には想像がつかないと思います。
日銀総裁や審議委員に金融政策否定派がすえられてきて、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会の会長が、首相の掲げる経済政策に真っ向から反対している学者で、しかも主張している内容が共産党と同じ、というまるで不条理ディストピア小説のような事態が日本では普通ですからね。これらは詰まるところ官僚支配の問題なのですが、日本政治の研究者でもないかぎり分からないでしょう。
2%インフレ目標の達成について、岩田副総裁は断固やるつもりでいると思われますが、黒田総裁がどこまで剛毅になれるのかが注目です。
ただ、インフレ目標は±1%を許容する枠組みの政策であるので、2%に到達できなければ失敗ということもないでしょう。
しかし、岩田副総裁はもともと「3%のインフレ目標が良い」といっていた*1のを政治状況や世論をふまえて2%という穏健な数字にしたわけで、2%のインフレ目標ではそもそも「弱い」可能性はあります。
「デフレと超円高」の中で、「名目GDP成長率を4〜5%に維持する目的で、3%のインフレ目標をすえるべきだ」と岩田副総裁は書いていらっしゃったのですから、2%インフレ目標を達成しそうになったときに、名目GDPが4%に足りなければ、もっと金融刺激することを国民は求めるべきでしょう。
国民がそれを求められるように、正しい情報を広める必要があります。
「日本には供給面での問題があり、構造改革が必要」というお話は、具体的にどのへんかを指摘してもらえると良いですね。
私も構造改革は必要だと思いますが、思いつくのは社会保障と農業、労働くらいです。
「まあまあうまくいっている時に悲観的なことを言う奴の方が賢く見える」というのは、まさに今の日本の状況にあてはまりますね。
日本の野党・マスコミ・デフレ派の後ろ向きさをよく言い当てています。
ただ、これは今回のご自分のエントリ内容にもかけたユーモアだと思います。

*1:安倍首相ももともとは『3%が良い』と主張していましたね