建前が過ぎると内心が醜くなる?

生活保護に関して興味深い記事。

日本の貧困対策がどれほど貧困かよく分かる数字
秋原葉月
http://blogos.com/article/49904/
10年以上も賃金が下がり続けているのは先進国の中で唯一日本だけです。
そしていまや先進国内では貧困率アメリカに次いで堂々の2位。
国民はそんな中にいるのですから、手厚い貧困対策、社会保障政策で国民の生活を守るのが国の責務と言えるでしょう。
それなのに・・・

不景気が続いて貧しくなる人が増えてしまいましたね。本来なら政府・日銀の愚策を批判してしかるべきなのですが、そのような活動は批判のために知識を仕入れなくてはならなかったりして色々とかったるいですから、面倒なことをするよりは安直に憤懣を誰かにぶつけるという道を選ぶ人が多くなります。
普段大人しく扱いやすい日本人の裏面です。

生活保護の補足率は、日本では20%に満たないと言われています。
ドイツやイギリスは85%を越えているのに比べ格段に低い数字です。
生活保護が必要な貧困状態にあるのに5人のうち4人が生活保護を受けられていません。
憲法が保障する最低限度の生活水準以下に陥っても80%以上の人が救われない、というのは、この国は生存権と言う憲法上の基本的人権をいかにないがしろにしているかを端的に示しています。

そうなんですよね。世間では「怠惰な貧乏人が俺たちのカネを食いつくす」というような意見が目立ちますが、実際には必要な保護を与えていないのですね。

では生活保護に充てる予算はどのくらいか、GDPにしめる生活保護費の比率を見てみましょう。
OECD加盟国平均2.4%
アメリカ3.7%
イギリス4.1%
ドイツ2.0%
フランス2.0%
日本0.3%
日本はOECD加盟国の中でも生活保護費の占める割合はGDP比率が0.3%と極端に低いのですから、これで国家財政が圧迫されて破産するとは考えられません。
国が国民の最低限の生活をしっかり支えようということにいかに不熱心かわかる数字だと思います。

とても恥ずかしい数字ですが、お役人様方は決して恥じません。おまけに天下りで得た特権でなんたら法人でも民間でも専横しまくりです。

そもそも財政危機のツケを社会保障費削減して貧困者に回すべきではありません。

うーん。
ここはもう仕方ないところまで来てしまっています。保険料は上げて給付は下げる、遅らせる、ということをするしかないのですが、その際に2つのことには拘らなければいけません。それは、

  1. 公務員の報酬を下げる。しかし人数を増やすのはアリ。*1
  2. 天下りに使う税金の大半を削る。
  3. 社会保障給付の減額については収入・財産を考慮して差をつける。一律平等にするのではなく、収入・財産のある人には減額を、ない人に対してはむしろ給付を増やす。ただ、人々を納得させる論拠作りが必要。

それは国全体としての消費を更に冷え込ませ、結局また税収が減って財政危機が更に深刻になるという負のスパイラルに陥ります。
このスパイラルを切るには、法人税上げやトービン税累進課税の強化、証券課税率上げで増収したり、日本の企業の9割以上を占める中小企業を活性化する経済政策を練るべきなのです。

生活保護を削ると消費が減るというのは正しくそのとおりでしょう。カツカツで生きている人たちなのですし、貯金を持てない仕組みなのですから。
格差が広がると消費が減少して経済が悪化するという見方は確かに存在します。お金持ちが皆贅沢だとは限らないので、どうしても貯蓄が増えてしまいます。
貯蓄が多すぎることは景気を悪化させるにとどまらず、その資金が投資に向かうので世界各地でバブルを発生させる素地にもなり、二重に問題があるでしょう。

この上、追い打ちをかけるように消費税増税して更に貧困者の負担を増大させ、その一方で法人税減税して大企業ばかりますます肥え太る・・・。
こういう政治が国民を幸せにするとはとても思えません。

消費増税には私も反対なのですけれども、法人税の減税は良い影響があるかもしれませんね。雇用が増える可能性があります。
「大企業が儲かる」ということに対する反発はよくあるものですけれども、大企業が好調だとその周辺の企業・産業にも経済的効果が及びますから、間接的に人々を助けていることも多いとは思いますよ。ただ、大企業のお偉いさんがたのご発言が貧乏人軽侮なので、その辺は人間として問題があると思います。嫌われる人がいるのも仕方ないことです。

自力で生きていけない人たちを国や政府は助けるべきだとは思わないと言う人が日本では三人に一人以上もいることがアンケートでわかりました。
日本 38%
アメリカ 28%
イギリス 8%
フランス 8%
ドイツ 7%
中国 9%
インド 8%
日本はなんという生きにくい国なのでしょうか。
「人様に迷惑をかけるな」という日本的な美徳は、度が過ぎれば他人に冷酷であることの裏返しでもあります。

普段建前で必要以上に腰を低くして振る舞う日本人が、唯一何の配慮もなく本音丸出しにできる対象は経済弱者だ、ということなのでしょう。
このアンケートは本当は「外国の人達はアンケートでも建前」ということなのかもしれないのですが、日本人が本音だからそれが正直で良いですね、ということにはなりません。
社会全体を見る目、他人への扱いが回りまわって自分に影響してくること、に対する考えの浅さがよく表れていると思います。
日本でデフレが20年も続き、その原理を理解しようとせずに「デフレは貨幣現象ではない」といった『新説』を勝手に唱えたり、政府や日銀の失政を罵倒ではなく正しい認識をもって批判するといった真っ当な方法を日本人は決して取ろうとしませんから、上記のような安直な弱者差別をするのも「さもありなん」といったところではないでしょうか。

こういう冷酷な国民性だから生活保護をサディスティックに攻撃する政治になるのか、それともこういう政治だから人々の心がささくれ立って冷酷になってしまうのか、卵が先か鶏が先かですが、どこかでこの閉じたスパイラルを断ち切らねばいけませんね。

ですね。当分無理ですが。
大人しい扱いやすい日本人でなく「怒れる厄介な日本人」が増えないことには見込みはありません。

*1:国会議員は減らしても良いかも…何の素養もない人は要りません。