【日銀】信じさせられない約束は意味ない

中央銀行が約束をしても、信じさせられないと意味がありません。
日銀が政府と「デフレ脱却を目指す」という共同文書を発表したそうですが、報道を見ていても日銀がどれほど責任をもって取り組むのかが書かれていません。
もし本気で取り組む気があるのなら報道記事の中に責任のとり方をむしろ入れたがるはずで、入れること自体が本来は金融政策の一部なのですから。それが見られないという時点で「ああ、やっぱりヤル気が無いな」と分かってしまいます。その事自体がマイナスの効果を齎してしまいます。

「一体でデフレ脱却目指す」政府と日銀が共同文書
(10/31 00:15) テレビ朝日
 日銀は、9年半ぶりに2カ月連続で金融緩和に踏み切りました。さらに、政府と一体でデフレ脱却を目指す異例の「共同文書」を発表しました。
 日銀・白川総裁:「デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的成長経路への復帰という課題の達成に向けて、政府と日本銀行が最大限の努力を行う」
 政府と日銀は、デフレ脱却に向けて一体となって必要な政策を取ることを約束する共同文書をまとめました。1998年に施行した新日銀法のもとでは初めてのことです。共同文書は、政府が働きかけ、日銀が受け入れる形になりました。金融政策決定会合に出席した前原経済財政担当大臣は、共同文書について「デフレ脱却に向けた重要な一歩」と位置づけています。財政の悪化で政府の経済政策が手詰まりになるなか、日銀に対する政府の要求は今後、さらに強まる可能性があります。

言っていることとやっていることが合わない。

「デフレ脱却のために政府と協力します」といくら口約束をしても、発言と行動がチグハグでは人々、なかんずく大きなお金を運用している人々を信じさせることはできず、金融政策の効果はあがりません。
それどころか、信じてもらえないことによってマイナスの効果が出るという実例が挙がっています。

円が上昇、一時対ドルで1週ぶり高値 日銀追加緩和の発表後[12/10/30]ブルームバーグ
午後の東京外国為替市場では円が上昇し、対ドルでは一時約1週間ぶりの水準まで値を切り上げている。
日本銀行によるこの日の金融政策決定会合での追加緩和観測を背景に朝方は円売りが先行したが、追加緩和の発表後は円買いが優勢となっている。
【中略】
日銀はこの日の会合で、政策金利を「0−0.1%」に据え置く一方、資産買い入れ等基金による長期国債と短期国債の購入をそれぞれ5兆円増やすなど、同基金の11兆円増額を柱とする追加緩和を決定した。

「金融緩和」したのにも関わらず何故かそれによって円高になるという逆転現象が生じています。
これは日銀の「緩和」の額が少すぎて「ヤル気がない」と思われたからです。口で何を言っても信じさせる行動が伴わなければ金融政策は効果を発揮しないのです。
日常的感覚で11兆円が多額であっても、デフレ脱却のための額としては少なすぎるということです。金融政策は直面している問題から相対的に判断しなくてはならず、決して「この額ならこの効果が挙がる」と断定できる種類のものではありません。もしそうならデフレ脱却は非常に容易なものの筈です。
「日銀は引き締めを行なっている」と言われる所以は、必要性から考えて遙かに足りない額ばかりを小出しにしてくるからで、その行動から日銀の「引き締めたい」という考えが読み取れるのです。カネを出していても必ずしも「緩和」ではないのですから、マスコミなどが「緩和」という言葉を連発するのは日銀の意向を受けた誤魔化しです。

自民・安倍総裁「小出しではダメだ」

安倍総裁はその辺の事情がよく分かっています。

政府・日銀金融策、自民・安倍総裁「小出しではダメだ」
産経新聞 10月30日(火)20時24分配信
 自民党安倍晋三総裁は30日夜、都内で行われた元衆院議員の会合で、日銀が発表した展望リポートや政府と日銀のデフレ脱却に向けた共同文書について「まったく市場は反応していない。こういう小出しの緩和ではまったくダメだ」と批判した。
 同時に「自民党が政権についてしっかりとした経済政策を打ち出す。大胆な金融緩和を行い、円高を是正し、われわれの成長戦略を実行する必要がある」と述べた。

現状では消費増税困難=自民総裁
時事通信 10月30日(火)21時9分配信
 自民党安倍晋三総裁は30日、都内で開かれた前衆院議員のパーティーであいさつし「日銀展望リポートによると、2014年度における物価上昇率は0.8で1%に満たない。今の状況では消費税を上げる状況をつくるのは難しい」と述べた。その上で「だからこそ自民党が政権に就き、デフレ脱却のために大胆な金融緩和を行い、今練っている成長戦略を実行していく必要がある」と強調した。 

日銀が使っているのは消費者物価指数ですから元来高めに数字が出てしまう傾向があります。
消費者物価指数で0.8%しか上がっていないなら、おそらく本当はマイナス、つまりデフレです。もともと日銀の目標が低すぎるのですし、日銀の目標である1%という数字を見ただけで、「デフレを克服する意思がない」と判断されてしまうのです。
インフレ目標が1%以上に設定されることがあるのはそのためです。