【デフレ】ヤル気が感じられないのが問題【予想】

金融政策についてのよくある間違いで、『中銀がカネを出しても出回らないから景気は回復しない』というものがあります。
中央銀行の政策が効果を発揮するのは、例えば「必ずマイルドインフレにします。マイルドインフレになるまでカネを出し続けます」という姿勢が人々から信用されることによって、人々の経済行動が変化することを通じてなのです。ですから、カネが出回る前から経済の改善が開始されます。*1
中銀のこのような約束を「コミットメント」といいますが、これは単なる約束ではダメで、人々から強く信用されるような担保が必要になります。
コミットメントのわかりやすい例としては『背水の陣』があげられます。背水の陣では退路を断つことで、「負けたら俺もお前らも全滅」という姿勢をみせて自分の本気度を知らしめたわけですが、中銀の行うべきコミットメントは勿論、国民を全滅させることではなくて、約束を守れなかったら中央銀行が責任をとるという形のデメリットをも引き受けることを表明することなのです。
つまり日銀のやってきたような口約束はコミットメントとは言わないのです。日銀自身はそう言いますが、誤魔化しです。
日銀の「金融政策」が効果を発揮しない理由は、規模が小さすぎて本気度を疑われ、総裁自らが金融政策の効果を否定することによって本気度を疑われ、期限や額を最初から切って提示することで「ここまでしかやらないのだな」という予想を作ってしまうからです。
最後の予想は非常に重要で、本来なら『マイルドインフレになるまで、景気が良くなるまで金融緩和が続く』と信じさせねばならないところ、「目標が達成できなくても、最初に決めた期限や額までしかやらないのだな」というダメな予想を立てさせてしまうところなのです。
その辺が日銀の『無能』なところなのですが、まぁ彼らもそれがわかっていなくてやっているのではなくて、どう考えてもわかっていてやっているから問題なのだし、そこは究明していかなければならないところなんですね。
これは陰謀論でもなんでもなくて、例えば日銀はよく「金融緩和の指標は金利」などといいますが、こういった考え方は教科書レベルの知識でも否定されているもののようです。アメリカの経済学部生(院ではなく)で金融を学ぶ者の7割だかが使う教科書にも出てくるものらしい。
ノーベル賞受賞者であるフリードマンがそもそもそのように発言しているわけで、経済政策に関わる人間が常識的に知っていることを日銀が知らないはずがないのです。
しかも白川総裁はもともとその辺の事を勉強していた、日銀総裁としては例外的に経済に詳しい人なのですから尚更です。*2

*1:株価上昇による資産効果やバランスシートの改善によるなど。最近、株価上昇の効果について「資産効果しかない」とする変な記事が著名な外国人筆者によって書かれていましたが、何故なのでしょうね。

*2:金融政策を司る長として、経済のことが何もわからない法学部出身者を延々と据えてきた日本という国の後進性は別の問題としてありますが…