反韓と願望
韓国の大統領が竹島に来たり、韓国のサッカー代表選手が独島アピールをしたり、といった悪手を打ったせいで日本の愛国者たちの間では反韓言論が盛りあがっていますね。
韓国人が「この時期に竹島問題で挑発するとは意味がわからん」と日本人から思われるような奇矯な振る舞いに出ているのは、一説には「経済が急速に悪化している」のが原因だそうです。
経済悪化の要因としては輸出の減少があげられるとのことですが、ここ何日間で目にする記事が、どうも日本の反韓感情におもねる内容になっているようで気になります。安直に読者を増やそうとしているような印象を受けます。*1
例えば以下の記事。
全文表示 | 急激に失速する韓国経済 輸出急ブレーキ、住宅バブル崩壊 : J-CASTニュース
この記事では、
韓国の輸出は、2012年7月の通関ベースで前年同月に比べて8.8%減と大きく減った。
と書いていて、韓国の輸出がこのところ減ってしまっているような印象を与えていますが、よく見ると「7月」限定です。
実際には以下の動画のように、
http://www.jetro.go.jp/tv/internet/20120803109.html
韓国の上半期の輸出は減速はしているものの、0.6%増えています。その影響として、「実質GDP成長率が3%に届かないかもしれない」という、日本から見れば贅沢な悩みが述べられています。韓国のここ3年の実質GDP成長率は平均すると3%ほどですが、日本はマイナス0.7%くらいです。
基礎的経済指標 | 韓国 - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ
基礎的経済指標 | 日本の統計 - 日本 - 国・地域別に見る - ジェトロ
韓国経済の調子が悪いという説に飛びついて勝ち誇ったり馬鹿にしたりしている人がいますが、現実には日本の状況の方が悪いのです。今までの蓄積があるからいいようなものの、経済政策の失敗によって年々食いつぶしている状況です。韓国は成長しています。
マスコミだけが反韓感情におもねっているのではなく、民主党にとっても韓国の悪手は追い風ですね。
増税法案を通して支持率がさがっているところ、韓国が民族感情を刺激するネタを振ってくれたおかげで、大したコストも実労もなく「毅然とした姿勢」を演出すれば、支持してくれる愛国者は大勢いますから。与党は今頃むしろ喜んでいるのではないでしょうか。
韓国が日本民主党に助け舟を出しているように見るのは穿ち過ぎでしょうか。
正確さに疑問があったり意味がわからなかったり
ここ1、2年に私が目の当たりにしたのは、「経済についての発言が、政治家・官僚・専門誌・専門紙・識者・学者の一部であっても平然とデタラメである」ことで、呆れるというか常識が覆るというか、肩書きがどうあれ容易く信用してはいかんな、という思いを強くしています。
その点で、上記のJcastの記事も「あれ?」というところが多いです。
西濱氏(第一生命経済研究所)【中略】(韓国は)一方で内需を喚起したいが、低金利や財政負担で景気を下支えすれば、日本型の長期デフレのリスクは高まります」と指摘。韓国は大きな曲がり角に立たされているようだ。
ここの意味がわからないんですよね。
低金利や財政負担の増加はデフレを克服するために行われることであって原因じゃないと思うのですが。
低金利や財政負担がデフレの原因であるなら、デフレの克服は簡単ですよね。高金利にして財政支出を減らせば良いのですから。
しかし、高金利にすれば企業や個人はお金を借りにくくなりますし、財政支出を減らせばその分だけ世の中にある仕事が減ってしまい、人々の収入が減ってしまうのですけれども。
お金が借りにくくなって収入が減ると、経済は活性化するのでしょうか。現状で余らせてしまっている生産能力をもっと活用できるようになると?
逆なような気がするのですけれども。
こういう記事を載せる前にメディアの側は内容を吟味する能力を持ち合わせていないものかと疑問に思います。
能力が無いなら経済記事は載せないようにした方が責任ある態度だと思います。