消費税で財政再建など的外れ

アジア危機の悪夢再び。米国はインフレ目標を打ち出したのに、欧州危機を前に「消費税増税」を仕掛ける財務省と野田政権の愚策(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

財務省は、その後の景気の落ち込みはアジア危機のためで消費税ではないという。その説明は苦しい。アジア危機の震源地である韓国は、たしかに危機時は景気が落ち込んだが、少し経つと回復している、一方、日本は回復していない。
すべてをアジア危機のせいにはできないのだ。

アジア危機なんてもう記憶に遠い出来事で何があったかも多くの人が覚えていないようなことで、しかもこの10年以上アジア危機に対する言及がマスコミでもなかったくせに、「1998年以降日本がデフレなのはアジア危機のせい」などと言うのは詭弁以外の何者でもない。アジア危機のせいにする者はどのような経路で日本のデフレや不況につながっているのか説明したらよい。

消費税増税は、今のような経済状況況では財政再建に不適切である。本来は税・保険料の不公平を是正するのが簡単な方法だ。五十嵐文彦財務省副大臣は、間に合わないとかいったらしいが、2年半前の民主党マニフェストに書いてある。1999年のイギリスの歳入庁創設の例でも、2年もあればだいたいできるのに、何をいっているのか。

税金をとるのにがめついようでありながら、税の取りこぼしを防止する歳入庁には消極的であることには何かを感じる。誰からの取りこぼしに配慮しているのだろうか。

日本では、スウェーデン社会保障での高負担・高福祉を例にして高負担でも高い成長が可能のように言われるが、スウェーデンインフレ目標をうまくやっている国としても有名だ。高い経済成長を支えているのはインフレ目標だ(「新聞が書かない『経済成長がなければ増税しても税収は増えない』という基本的事実『インフレ嫌い』の与謝野大臣には不都合な真実http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2043を参照)。しかし、マスコミはこれを知らない。

1998年4月の新日銀法施行以来、日米でインフレ率がどうなっているかをみると、日本で0〜2%におさまっていたのは1割6分、米国で1〜3%におさまっていたのが7割3分。先進国では6割以上が求められるので、日銀は明らかに落第だ。しかも、0%以下のデフレの確率は8割2分。これでは「日銀のデフレターゲット」と言われるのは仕方ない。

このようにパフォーマンスの悪い部門でも責任を取らせることができないのが現在の日銀法。民主的な根拠がなく、しかも国民生活全体にダメージを与えるような事をしていても、誰も何もできないのが今の日銀法の欠点。

これでも、日銀はこれまで「ジャブジャブ」にしてきたといい、マスコミもそれを鵜呑みにして報道する。しかし、世界で見れば、2000年代の日本のマネー伸率は世界最低である。そのため、世界最低の物価上昇率、世界最低の名目成長率になっている。
これだけのデータを示しても、日銀はデフレ(継続的なインフレ率のマイナス)脱却をできないというだろうし、これまでもそう言い訳してきた。今回の発表では、「長期的なインフレ率は主に金融政策によって決定される」(米連邦公開市場委員会(FOMC)声明)と書かれている。これでもう言い逃れはできないだろう。

金融政策でインフレ率が決定できないと堂々と言ってのける金融政策の担当は世界広しといえども日銀だけだからねぇ。何のために存在しているの、高い報酬とっておいて。