「明日は我が身」とか寝言を言う財務相がいるが
財政再建をしないのが問題ではなくて、不況下に財政再建をやろうとして情勢を悪化させているのが欧州。日本は巨額のムダを放置して不況下で増税しようとしている。「財政再建」は目眩ましに過ぎない。欧州と日本は違って見えるが「不況下に更に経済を縮小させようとしている」愚を犯そうとしているのが共通している。
欧州と日本の危機を概観できる良書
- 作者: 岩田規久男
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/12/23
- メディア: 新書
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現在問題になっている欧州と日本の危機をそれぞれ分かりやすく解説している良書。
「分かりやすい」といってもそれは「このような問題の解説としては非常に分かりやすい」という程度問題であって、マンガや小説を読むように読んではいけない。「一読して分かる」ような読書も悪くはないし私自身マンガや小説は好きだが、世の中にはそういう読み方をしてはいけない本があるし、能動的に何度も読む努力をしてでも習得しなければならない教養がある。その教養が共有されていなければ社会が混乱と危機に陥るような種類のものがある。
但し別に日本に限らずどの国でもそのような共有はなされないので現に混乱と危機が発生しつつある。その辺は人間の限界なのでどうにもならない。
アメリカが今のところ破綻を回避してきており、問題を乗り切る兆しが見えつつあるのはやはり底力があるということ。選挙の趨勢によってはどうなるかわからないが、少なくとも欧州や日本のように歴史がある故に硬直的な社会とは異なる資質を持っている。
最近では社会主義市場経済とかいう強引なシステムを持つ中国の方が、なんちゃって資本主義の日本よりも経済に対する正しい知見を共有しており、経済運営もマシ、という事実が明らかになっている。その中国も失速し始めているのだからいよいよ崖の淵が迫ってきている。
リーマン・ショック第二章
「ユーロ危機と超円高恐慌」からわかるのは、欧州危機は「リーマン・ショック第二章」だということである。しかしリーマン・ショックより深刻なのは、欧州で銀行危機が発生した際には国債を発行して財政支出をする余力が既に存在しないという点だ。リーマン・ショックの時に各国がとったような対策がとれないのでより深刻な事態が発生する懸念がある。
そのような状況でもなかなか欧州では対処への足並みが揃わないし、欧州中銀も日銀を彷彿とさせるインフレ恐怖症のようで金融政策を通じた経済成長や債務負担の軽減という方向に向かえていないのが現状。
日本がやってきたような馬鹿げた緊縮政策を欧州がとればその悪影響力は日本の比ではない。日本は皆がわけもわからないままお手々つないで途上国入りを目指しているコントの最中でしかないが、欧州が似たようなことをやればアメリカも新興国も全部巻き添えにして連鎖的な銀行危機と強烈な経済収縮が発生する。暴動や難民が世界中で発生するのではないかと思うのは考えすぎだろうか。もしそのような危機が実現すると長期間に渡って各国民が経済的に逼迫した生活を送ることになるので戦前のような極右が台頭してこないかと不安になる。
そもそもユーロは適切だったのか。
この本では「北海道円」「沖縄円」という仮定をもって、ユーロのあり方そのものを検討している。このくだりは非常に興味深いので本書を手にとって頂きたいと思うが、「最適通貨圏」という概念が重要である。ユーロには根本的に無理があるというのが著者の結論であった。