「聯合艦隊司令長官 山本五十六」鑑賞

非常に久しぶりに邦画を映画館で。
半藤一利原作ということで、山本五十六の欠点も描かれているような評判だったので見てみたところ、まぁ予備知識が無いとわからないくらいにしか描写できていなかったのだが、仕方ないという気がする。美化はやはりされていたけれども、よく頑張ったという感じ。映画では実在の人気人物を批判することはなかなかできないだろう。その点で純然たるフィクションの存在価値があると思った。映画を見て半藤氏の著作に関心を持って読む人が増えればより詳しく問題点がわかるだろう。
この映画はメッセージ性の強いものだし題材が題材なので相当に説明的になっていて、扱っているテーマに興味のない人にとってはちょっとしんどいかな、と思われるがそれでも意義のある点が幾つか。

海軍善玉論を否定。

三国同盟からミッドウェーのあたりまで、海軍にも軽薄な連中がいたことをきちんと描写。三国同盟で揉めるくだりでは「米内はどこにいるのだろう?」と思いながら見ていたのだが、今サイトで調べたらなんと柄本明が米内でした。ちょっと気づかなかった。柄本明乃木希典をやったり米内光政をやったりで、今年は陸海軍グランドスラム達成。

新聞の腐れぶりを批判。

学校教育的な歴史観だと「軍国主義言論の自由を奪った。」というプロパガンダばかり吹きこまれているが、この映画では新聞が積極的に戦争を煽ったという事実を容赦無く描写。これは実にタイムリーなことで、現在の新聞は消費税に万歳三唱している最中。シンクロニシティかと思ったぜ。まるで進歩していないのが新聞だということで、連中には軍国主義を批判する資格などない。今の新聞は経済に打撃を与える政策を私利私欲からヨイショしまくって困窮から死に至る国民を生み出そうとしている。おそらくその数は数千人くらいにはなる筈なので、シベリア出兵くらいの人死には出るわけだ。

加藤友三郎に言及。

セリフの中だけだけど。加藤友三郎の偉大さはもっと知られるべきだがドラマにはならないだろうねぇ。

CGが結構すごい。

兵器や戦闘の描写で、こう言ってはなんだが邦画なのに非常によくできていた。戦争反対映画なので戦闘シーンにワクワク感はないものの、『日本の映画でもここまで出来るんだ』と思わされる出来。

志のある映画。

あまり一般受けしそうにないけれども、志がある映画。戦争映画はどこかに偏りがちなもので、例えば感動巨編になったり反戦プロパガンダになったり英雄譚になったりという感じだが、この映画では「日本人のグダグダぶりを描く」というドラマになりにくいことを扱って、かなり健闘している。観客の大多数が分かりやすさばかり求めるという現実をわきまえつつもチャレンジしたことは偉いと思う。