円高の正体 浜田宏一☓高橋洋一☓阿部重夫


★要旨

  • 円高対策が進まないのには制度的な要因がある。
  • 為替相場財務省の権限。これは固定相場制だったころの名残で、今は変動相場制なのだから変えれば良いのだが…
  • 為替が財務省の権限である故、日銀は「財務省の権限を侵害したくない。」という建前で金融政策をしたがらない。つまり「円高は日銀の責任ではない。」と言い訳できる。
  • 為替介入に利用する「外為特会(がいためとっかい)」は財務省の利権

☆maddercloud注釈(為替介入のしくみ)

  • 為替介入の意思決定は財務省、実行は日銀。
  • 介入資金は外国為替資金特別会計(外為特会)から捻出する。(円高にするため円買いドル売りする場合、外為特会の外貨準備を使って円を買う。)
  • 円安にするために「円売りドル買い」をする場合、政府短期証券(FB)を発行して円を調達⇒それを売ってアメリカ国債を買う(アメリカ国債を買うことが『ドル買い』)⇒しかしアメリカ国債をいつまでも持っておくことはできないのでいつかは売る⇒その時には円高になる⇒故に「介入にはあまり意味が無い。」と言われる。
  • 日銀は財務省による為替相場への介入に協力することも出来るし邪魔することも出来る。

☆maddercloud注釈(為替介入と日銀の関係)

  • 財務省が為替介入のためにFBを発行する」とは入札で金融機関などがFBを購入すること。
  • 「金融機関が購入する」ということは円は金融機関から吸い上げられている。
  • となると、日銀が金融機関からFBを買ってあげれば(買いオペ)金融機関の手元に円が入ってくる。
  • 世の中の円の量を多くすれば(金融緩和)、円安へ向かうのだから財務省の円安のための介入に協力するなら日銀は買いオペする。日銀が買いオペしないと円安効果が薄れるので邪魔することもできる。
  • 円高とデフレは表裏一体。デフレは日銀の不作為のせいなので円高も日銀に責任があるとわかってしまうのを嫌がる。

☆maddercloud注釈(円高とデフレの関係)

  • 日本のインフレ率(物価上昇率)を0%、アメリカのインフレ率を2%とする。
  • 今、ハンバーガーが日本で100円、アメリカで1ドルとする。100円=1ドルの関係。
  • 1年後にはハンバーガーは日本で100円、アメリカで1.02ドル。100円=1.02ドルの関係。
  • 100円=1.02ドルをドルに合わせて換算すると、1ドル=約98円になっている。
  • つまりインフレ率が低い方の国は通貨高になる。日本で言えば円高
  • デフレはインフレ率が低いということなので、デフレの日本は円高になる。
  • ということは、インフレ率をアメリカと合わせるようにすれば円高になりにくい。
  • 円安になると輸出企業の収益が非常にあがり、法人税が政府にすごく入る。
  • するとそれで財政再建が出来てしまう。それは財務省にとってとても困る。増税ができなくなるから。財務省増税3段階ステップを考えている。
  • 財務省はそれを否定するがそうとしか考えられない。
  • 金融緩和せずに為替介入をするせいで為替差損を被り、外為特会は破綻状態。累積30兆円の損が出ている。
  • 日銀が金融緩和によるデフレ脱却を嫌がるのは彼らの主張する「人口デフレ論」が間違っていたのがバレてしまうのを嫌がるから。「無謬性」にこだわっている。
  • 「実質実効為替レートが高くないから円高ではない。」という主張に国民がだまされないようにしていくのがこれから大事なこと。

☆maddercloud注釈(実質実効為替レート)

  • 「実質実効為替レート」とは物価を考慮した為替レート。
  • 物価が低くなると実質実効為替レートは低くなる。
  • 日本はデフレなので実質実効為替レートは普通の為替レートほど高くならない。
  • 「だから円高ではないのだ。」という主張が見られるが、それはつまり「デフレで良いのだ。」と言っていることになる。
  • (maddercloud私見)デフレは有害な筈なので「良いデフレ」とか「デフレ無害論」を唱える人はリフレ派の専門家と公開討論して欲しいです。討論をさけてメディアから一方的にリフレ派を否定するのはおかしいですね。

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伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本

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浜田宏一先生との対談本で、かなりわかりやすいです。日銀の白川総裁へのメッセージがあります。
この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)

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高橋洋一先生の本はたくさん出ていてどれも興味深いです。私も最新の著作はフォローしていないので去年購入した本を挙げます。