「10万年の危険」まとめと感想

  • フィンランドの最終処分場の趣旨は放置してメンテナンスがいらないこと。
  • この最終処分場はフィンランド放射性廃棄物だけでいっぱいになる。100年後に閉じられる。
  • 未来の人類がオンカロを開けてしまうのが最大の脅威。もし開けられたらこの計画は失敗。
  • 遥か未来の人類は異なる言語を話している可能性が高いので、オンカロの危険性をどう伝えるのかが問題。
  • 各国語や絵で伝えるという意見もあるが、何も標識を残さず忘れ去られる方が安全という意見もある。数百年後の社会ですら予測は不可能なのだが・・・
  • 未来の人類の技術力は上がっているかもしれないし下がっているかもしれない。わからない。
  • 原子力はせいぜい今世紀しかもたない。長期的に持続するのは無理。
  • 資源をめぐる争いが激化するであろう。
  • オンカロは不確実性のもとでの決断。それしかできない。
  • オンカロの危険性を代々伝える義務がある。その時代の言葉で書きなおしていく。それを何千世代も継続する。
  • 未来の人間がこの処理場について適切な行動をするかどうか全くわからないが造るしかない。
  • インドや中国が勃興しているが彼ら全てが今後20年で先進国並の電力消費をするならこれから一日に3基ずつの原子炉を建造しなければならない。
  • 再処理をするべきではない。とりだしたプルトニウムが漏れる危険性があるし、核兵器に転用される可能性もある。
  • 全ての放射性廃棄物を無害化する方法はない。
  • オンカロフィンランド放射性廃棄物だけで一杯になる。

フィンランドの最終処分場である「オンカロ」は18億年前の安定した地層に地下500㍍ほって建造されています。「体感できない地震しか起こらない」フィンランドの中でも特に安定した場所に建造されているのです。日本にそのような場所があるかと言えばおそらく無いでしょう。
「地下都市」とも形容されるオンカロフィンランド放射性廃棄物だけで満杯になり100年後に閉鎖されます。フィンランドの原子炉はわずか4基。今後増やしても10基にもならないでしょう。その一方で日本は54基の原子炉、大間原発を入れると55基。そして最終処分場なし。
オンカロの建造開始から稼働まで16年かかりますが日本では候補地の選定もまだ。フィンランドの13倍以上の原子炉をかかえる日本です。河野太郎議員の試算では7年程度で放射性廃棄物の置き場がなくなるそうですから(リンク:http://www.taro.org/2011/05/post-1017.php)今から建造開始したとしても間に合いませんね。
オンカロの建造費はわからないですけれども、フィンランド放射性廃棄物最終処分には30億ユーロかかるそうなので日本円で3500億円ですかね。(リンク:Final disposal - Posiva)日本の13分の1の原子炉でこのお値段。ただし再処理をしない最終処分です。日本では再処理をするのでその分費用がかかります。
フィンランドは歴史的にロシアを警戒しており、化石燃料を輸入したくないという事情から原子力を利用しているのですが、それでも「今世紀でお終い。」という明確な認識を持っています。自然エネルギーも同時に推進しているからには結局は自然エネルギーによって資源を食い延ばすか枯渇した後は依存しようかと考えているのだと思います。
「中国やインドの人々全てが今後20年で先進国並の生活をしようとすると一日に3つの原子炉を建造しなくてはならない」という発言はつまり「そんなの無理。」と言っているわけで、中国やインドは地域格差が異様に激しい国となるだろうし、それは不安定要因になるでしょう。原発を増設するのは確実なのでウランの枯渇問題、放射性廃棄物問題はさらに大幅に深刻な問題と化すのでしょう。
そして「10万年の危険」という映画の中で重要なのは、オンカロの建造を担当する会社は「10万年大丈夫だ。」と言う一方で「これは不確実性の上での決断だ。それしかない。」という人もいることです。それはつまり、オンカロもまた確実に安全なものではないがそうするしかないという認識を示しているということです。