「核燃料サイクルは重要だが機能しない」は矛盾していない。

私は菅政権を支持しているわけではないのですが、「とにかく叩けば良い。」という考え方はしません。
この所の菅首相核燃料サイクルの問題点を指摘したり発送電分離に言及したりと評価に値する発言をしています。まぁ本当に実行するのかどうかは未知数ではありますが。
青森県知事は菅首相の発言を「日によって変わる。」とネガティブなイメージ付けをしていますが、私は記事を読んでもどこがおかしいのか全然わかりませんでした。以下が記事全文。

首相発言、日によって変わり…波紋広がる青森県
 菅首相核燃料サイクル政策をめぐる一連の発言に波紋が広がっている。


 重要性に言及したり、見直しとも取れる発言をしたり、方向性が定まらないからだ。青森県は関連施設を多く抱えているだけに、関係者は首相の発言を注視している。


 首相は17日に共産党の志位委員長と意見交換した。志位氏によると、首相は「使用済み核燃料を六ヶ所村の再処理施設に持っていくサイクルが機能しない状況になっていることは事実。そういうことも含めて、(国のエネルギー基本計画を)白紙から見直したい」と述べた。これが核燃料サイクル政策の見直しを示唆したものと受け止められた。


 ただ、前日の衆院予算委員会で首相は、「青森の核燃料サイクル施設は、極めて重要な意味を持っている」とその重要性について言及し、個別施設のあり方については明言を避けた。


 核燃料サイクル政策の基幹施設である六ヶ所村の再処理工場はただでさえ、技術的な問題で完工が大幅に遅れており、行政関係者らはこれまでも、見直しに関する発言には敏感に反応してきた。青森県の三村知事は18日の読売新聞の取材に対し、「首相の発言は日によって変わるから何と言っていいかわからない」と語った。
(2011年5月19日11時34分 読売新聞)

「青森の核燃料サイクル施設が極めて重要な意味を持っている」のは当たり前で、これが機能しないと核燃料サイクルが成り立たないでしょう。将来はどうあれ現状は「核燃料サイクルします。」といって何兆円もかけて仕組みを作っているのですから。
しかし、六ヶ所村が機能していないのもただの事実です。
六ヶ所村自体が技術的困難によって18回も完成延期を繰り返しているのでは「ひょっとして技術的に無理なんじゃないの?」という危惧も当然でしょう。
また、再処理後にでる放射性廃棄物の最終処分場が決まっていないのですから、技術的困難を克服しても六ヶ所村は稼働できませんね。
そのまま原発の運転を続けたら、出続ける使用済み核燃料を各原発のプールに延々と溜め込むしか無く、その容積には限界があって目一杯に溜まってしまうのも遠い未来のことではありません。
使用済燃料が溢れてしまったらそれ以上原子力発電を継続することはできませんよ?
そして核燃料の再処理をする方が費用がかかるのですから、「それってリサイクルなの?」という疑問もあるのです。
核燃料サイクルをしてもウランを採掘できる年数が1割しか伸びないという事も考えあわせると見直しをする方が合理的ですよね。
原子力をやります、しかも核燃料サイクルをしますといって何兆円もかけてきたからやめにくいというのはあるでしょうが、私は「損切り」のつもりで中止するのが理性ある態度だと思います。
これまでかけたお金が勿体ないから、責任を追及されるのが嫌だから、体面を保ちたいから、という理由で技術的にあやふやで非常に危険で、コストも上乗せされる事業を継続するのは国土・国民の安全と利益に反する行為だと思います。
核燃料サイクルをやめて、そこに掛けるはずであったお金を自然エネルギーの研究・開発・設置にかけるべきです。